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第6章 ワタシ  ―あの人 ―
2010/09/29(Wed)
 竜之介はオフィスから逃げるように早足で歩く。

 竜之介の心臓は守衛室でGUESTカードを返した時にガードマンに言われた言葉にまだドキドキしていた。

『お嬢さん。 ビルの中だからまだしも、お楽しみはほどほどにしておかないと捕まってしまうよ。 このビルの中にだって監視カメラはたくさん設置されているんですからね。 橋本君には僕からも言っておいてあげるから』

――モニターで見られていたんだ、、、 トイレに行く時もコーヒーを買いに行く時も、、、

  
 竜之介は去年までいた警察上がりの老ガードマンとウマがあい、時々守衛室でお茶をご馳走になって世間話をすることがあった。

 外からは見えないが中に入ると壁面にたくさんのモニターが掛かっていて、各フロアの監視カメラの映像が映っていたのを思い出した。 

 自分の恥ずかしい姿が映り、それを守衛室で見られていたのかと思うと叫び出したいほどに羞恥心が込み上げてくる。

 竜之介は顔を真っ赤にして通用口を駆け抜け表に飛び出してきたのだ。

 山科社長が待つスターバックスが見えてきた。

――この資料を渡すだけでいいんだ、、、

 先週のアムールでの事を山科が気付いてない事を祈る思いで竜之介は店の中に足を踏み入れた。

           ◆
「どうも、、、 山科社長、お久しぶりです、、、」

「おお~~っ。 これは、これは! 速水さんが届けてくれるとは嬉しいなあ! 貴女も休日出勤だったんですか?」

 山科は立ち上がり、竜之介の手を取り握手を交わす。

 しつこく手を握り続けるグローブのような山科の手にアムールでの出来事が嫌でも脳裏に蘇ってくる。

 しかし山科の媚びるような態度はアムールで口淫した相手が竜之介だったことを知っているようにはとても見えず竜之介は安堵した。

「ええ、、、 あの、これを橋本から預かってまいりましたので、、、 では私はちょっと急ぎますので」

「ありがとうございます。 でもまあそう言わないで、ま、まっ、座ってくださいよ、速水さん! とりあえずコーヒーだけでもご一緒しましょうよ。 ねっ!? 何が良いですか? 私が直ぐに買ってきますから」

 山科は竜之介の返事も聞かずカウンターに駆けていった。

「ふぅ~~、、、」

 竜之介は封筒を手渡しすぐに帰ろうと思っていたのだが、仕方なく山科が座っていた席の向かい側に腰を下ろした。

 昼間、コーヒーをテイクアウトした時もそうだったが、普段竜之介として利用している店なので顔見知りに出会わないか心細くて仕方がない。

「速水さん、アイスコーヒーで良かったですか?」

 程なくトレイを抱えた山科が嬉しそうな顔をして戻ってきた。

「あっ、はい。 ありがとうございます」

 受け取ったコーヒーに口を付けた途端、携帯に着信があった。

 橋本からだった。

「すいません、山科社長。 ちょっと失礼します」

 席を立ち、店の表まで出て電話に出た。

「もしもし、、、」

『おう。 山科のおっさんに会えたか?』

「はい。 資料はお渡ししました」

『そっか。 ありがと。 今日はご苦労さんだったな、竜。 後は好きなように休日を楽しんでくれ』

「いえっ、直ぐに帰りますから」

「まあ、ご随意に」

 電話が切れ、竜之介はため息をついた。

 その時、ふいに肩を叩かれドキッとした。 

「やあ。 こんにちは」

「あっ、、、」

――あの人だ、、、

 振り向いて背後に立つ男の顔を見た瞬間、竜之介は心臓が止まりそうなほどに驚いた。

 凌辱されているなか何故かしら温かみを感じ、あれ以来ずっと気になっているあの男の声だ。

――どうしてここにこの人が? 

 偶然とはとても思えない。 橋本か富岡の仕業に違いないと竜之介は思った。

「ど、どうも、、、」

 竜之介は何と言っていいのかわからなかった。

「誰だか分るんだね?!」

「あっ、、、はい、、、 きっとですけど、、、」

――ボ、ボク、、、 ときめいてる?!

「そうか。 じゃあ話が早い。 少し早いが食事に付き合ってくれないか?」

「えっ?! 私とですか、、、」

「ああ、みちると。 今からね」

「えっ?! い、今からですか?!」

「ああ、今からだ」

「でっ、でも、、、」

「速水さん、どうしたんですか?」

 山科が二人のところへ心配そうな顔をして駆けてきた。

「いえ、あのぉ、、、」

「みちるの叔父です。 みちるがいつもお世話になっています」

 竜之介が言い淀んでいると、目の前の男が山科に軽く会釈をし、平然と叔父に成りすまして言った。

「久しぶりに東京へ来ることになり、姉からも娘の様子を見てきてくれなんて言われていたものですから、仕事がすんだら食事をしようと約束していたんですよ」

「あっ、そうなんですか、、、」

 山科は明らかに落胆したような声で応えた。

「私の事は気になさらないでください。 仕事が終わるまで待っていますから」

「あっ、私は資料を頂くだけでしたので、もう、、、」

 山科は叔父と名乗る男の言葉を信じたようで逃げの体制だ。

「そうですか。 みちる、いいのかい?!」

「あっ、はい、、、」

「そうか。 じゃ行くか。 荷物はないのかな?!」

「あっ」

 竜之介は座っていた席に駆け戻る。

 あれよあれよという間に”あの人”と一緒に食事に行くことになってしまっている状況が不思議で、そして不安で一杯だ。

 バッグを持ってドキドキしながら二人のところへ戻った。

「山科社長、ご馳走様でした。 じゃあ、失礼します」

「ああ、じゃあまた」

「そう。 じゃ行くか。 では失礼します」

 そういうと男は竜之介の腰に手を回し、身体抱き寄せて歩き始めた。

――ああぁぁぁ、、、 どうして、、、

 男の手が腰に触れた瞬間、熱く切ない疼きがズキンと湧き起こった。

「あぁぁ でも、、、 あのぉ、、、 どうして、、、」

「会社には戻らなくていいんだろ?」

「は、はい、、、 でも」

 付いていけば食事だけで済むわけはない。 その後に何があるのかは分りきっている。 

――この人はボクの事を全部知ってる、、、

「何が食べたい?」

「えっ、、、 あのぉ、、、」

「好き嫌いはあるのかい?」

「いいえ、、、」

「ふふっ。 じゃ、僕に任せてくれるかな? 美味しい物をご馳走するよ」

 付いて行ってはダメだと思ってもこの男のペースにグイグイと引き込まれていく。

 そして絡めとられていくような緊張感に竜之介はゾクゾクしていた。 

「、、、はい」

 暫く歩いているうちに、そうしろと言われたわけでもないのに竜之介は男の腕にそっと腕をからめる。

「ん? どうした?!」

 男は不思議そうな顔をして竜之介を見つめた。

「叔父に甘える姪です、、、」

 少し怒ったような言い方で竜之介は懸命に恥ずかしさをごまかす。

「ふふっ。 そうだったね」

 竜之介は腕に力を込めてギュッと男の腕にすがった。

 なぜ、自分から甘える様なことをしてしまったのか、竜之介は自分でも不思議で仕方がない。

 ただ一緒に歩いているだけでとても心地よく感じる”みちるの感覚”を竜之介は楽しんでいた。 

      

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コメント
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yu☆riさん、コメントありがとう^^
この物語は「真梨子」のスピンアウトですとだけ言っておきま~~すっ。
もうすぐ名乗りますから~(笑)
2010/09/30 23:53  | URL | 羽佐間 修 #aweimhBo[ 編集] ▲ top
-  -
久しぶりのカキコでーす
もしかしてスタバにいたあの人は真梨子の旦那さまじゃないですか??
前作のスピンアウトと紹介にあったのでそう思ったんだけどもそうならこれから真梨子とかも出てくるんですか
凄い楽しみーー
2010/09/30 21:23  | URL | yu☆ri #mWp/3j2s[ 編集] ▲ top
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