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第5章 カラダ  ―休日出勤2日目― 2
2010/09/27(Mon)
 シャワーを浴び、バスタオルを巻いただけの恰好で竜之介はバスルームを出た。

――やっぱり、、、

 着替えに用意していた下着が見当たらないと思ったら、ソファにふんぞり返った橋本がブラジャーを指に引っかけグルグル廻している。

「安心しろ。 何もしねえよ。 朝からエロモード突入して仕事する気がなくなったら俺が困るからなあ。 今日の下着はコレだ」

 橋本が背中に手を廻し、ソファの間に隠していた真っ赤なランジェリーを取りだして竜之介に向かってかざした。

「あぁぁぁ、、、」

「ぐずぐずすんなよ、竜之介~。 それとも出勤前にケツ穴に一発、欲しいのか?」

「あっ、いえ、、、 わかりました。  あっ、、、」

 橋本が持つブラジャーに手を伸ばすと、スッと手が引っ込められてしまう。

「先にバスタオルを外せ」

 橋本はブラジャーに頬ずりしながらニヤニヤ笑って言った。

「あぅぅ、、、 はい、、、」

 竜之介は明るい部屋の中でバスタオルを取り、湯上りの紅潮した素肌を橋本にさらして下着を受け取った。

――恥ずかしい、、、 あっ、これは、、、

 手にした赤い下着は、初めて恵理に会った時にランジェリーショップで買ってもらった物だった。
  
 恵理との思い出が詰った下着を身に着けていくその一部始終を『ふん、ふん』と橋本は鼻息を鳴らし、じっと眺めている。

「それはハーフカップブラっていうのか? 乳首がまるで隠れてないぜ。 あの女と露出プレイする時に着てたのか?!」

――あぅぅ、、、 言わないで
 恵理との野外での恥戯を見られている橋本のいたぶりの言葉は、竜之介の被虐心を一気に昂らせていく。

 メイクを施し、髪を整えている間も橋本は引き寄せた椅子の背に肘をつき竜之介の変身を楽しそうに眺め続けた。

「やっと出来たか。 女の身支度ってのは時間がかかるよなあ。 しかしこうやってみるとお前、マジで女にしか見えんなあ」

 橋本が鏡を覗きこみしみじみと言った。

「今日はこのスーツで出勤だ」

 橋本がクローゼットから引っ張り出してきたものは黒いミニ丈のスーツだった。

――あっ、、、 恵理に貰ったスーツ、、、

 橋本が手にしているスーツを目にして竜之介は胸が締めつけられた。 恵理が着ていたのを竜之介がねだってアメリカに旅立つ前に貰っ

たもので、まだ袖を通したこともないスーツだった。

「お前、来週からこの髪形で出勤してみろよ。 スッピンでもお前だと気付かないかもな」

 橋本に見詰められながら身に着けるスーツは思いのほかタイトで竜之介の身体にぴったりと張り付き、スカート丈は思った以上に短くて股下5センチ程しかなく少しかがめばショーツが覗けそうなシロモノだった。

「おっ、いいじゃん。 いつでもパンチラサービス出来るなあ。 さあ、行くぞ。 竜之介」

「、、、はい」


           ◆

 橋本の運転する車でオフィスのあるビルに着くと、守衛室という関門が待っていた。

 顔見知りの守衛の前で橋本が入館の記帳をしている間、竜之介はドキドキしながら平静を装い佇む。

「届けより遅くなるようでしたら、事前に声をかけてくださいね」

 竜之介は守衛に会釈して、手続きを済ませて歩き出した橋本を追った。

「へへっ。 ドキドキしたか? お前は山科システムの社員ってことにしてあるからな。 ほい。 これだ」

「えっ!? はい、、、」

 橋本はエレベータの中で竜之介の首に来訪者用の”GUEST”と書かれたIDをぶら下げた。

         


           ◆

「ただいま、、、」

「おう、サンキュー」

 竜之介は両手にスターバックスのコーヒーカップを持って開発室に戻った。

 行きつけの定食屋で橋本と昼食を摂り、オフィスビルの前まで戻った時、食後のコーヒーを買ってきてくれと命じられたのだった。

 日曜日のオフィス街なので定食屋もスターバックスも普段程には込んではいなかったが、竜之介に顔見知りに会わないかヤキモキする時間を過ごさせたのは橋本の意地悪に違いない。

 橋本の態度が昨日と一変したのは、昨夜でほぼ仕事の目処がついているからだと竜之介は察している。

 しかし午前中は何も仕掛けてこなかったし、この仕事が終わるまでは淫らに迫られることはないだろうと楽観していた。

「どうだ?! 後どれくらいで出来る?」

 コーヒーをすすりながら竜之介の胸元を覗きこむように橋本が尋ねた。

「そうですね。 もう少しです。 後1時間ぐらいですかね」

「そっか~! 1時間かあ」 

 橋本は嬉しそうに言うと、ブラインドを巻きあげ、窓を開け放った。 梅雨明け間近の真夏を思わせる日差しがオフィスの中を照らし、湿気を含んだ生温かい風が吹き込んできた。

「冷房は女性の身体にはよくないらしいし、今日は天気がいいから窓を開けた方が気持ちいいだろ?!」

 他の窓も同じように開けていく橋本を奇異な目で竜之介は眺めていた。

「熱いんじゃないのか?! 服を脱いでもいいぜ、竜之介」

「はい?!」

「遠慮せずに脱げよ」

「いえ、、、 いいです。 大丈夫ですから、、、」

「俺は気にしないから。 どうぞハ・ダ・カでくつろいで仕事をしてください」

――始まった、、、

 指示書改定の先が見えて安心したのか橋本は露骨な態度で竜之介を弄び始めた。

「会社の中では赦してください、、、」

「ふふっ。 会社の中だからこそお前は嬉しいんだろ?!」

「ちっ、違いますっ」

「ふふっ。 まあ、そういうことにしておいてやる。 とにかくその暑苦しいスーツを脱げよ、竜之介」

「あぁぁ はい、、、」

 竜之介はスーツのボタンを一つずつ外していく。

「向かいのビルから誰かが覗いてくれるといいな。 なあ、竜之介?!」

 橋本が窓を開け放った訳が分った。

 窓に目を向けると向かいのビルとはかなり離れているので窓際に立たない限り見られないとは思うが、窓が開け放たれていると思うだけで恥ずかしさが増してくる。

 橋本は自分の席に戻って竜之介がスーツを脱いでいくのをニヤニヤ眺めていた。


           ◆

 竜之介は下着だけの姿でパソコンに向かい、仕様書を仕上げていく。

 この作業が終われば、橋本に身体を弄ばれるに違いない、、、 作業が進むにつれ、その刻が近づいてくる皮肉に竜之介の心は妖しくざわめいていた。

「竜之介。 喉が渇いた~。 コーヒー買ってきてくれ」

「えっ?! もう赦してください、チーフ、、、 守衛さんに気付かれちゃいます、、、」

 外出するたびに守衛室の前を通るのが怖くて仕方がない。

「ふふっ。 今度はスタバのでなくていいよ。 自販機のでいいや」

 橋本はポケットに手を突っ込んでチャラチャラ音をさせながら小銭を探った。

「は、はい、、、 分りました」

 竜之介がスカートに手を伸ばすと、すかさず橋本が制した。

「着なくていいぞ。 その恰好で行け」

「そっ、そんな、、、 無理です!」

「どうして?」

「だって、、、 誰かに見られたら、、、」

「誰もいないさっ。 もし誰かに見られたとしても何か問題あるか? 性器を露出してるわけじゃないし、男が胸を出してたって罪にならないさ。 だろ?!竜之介くん」

「そっ、そんなぁ、、、」

「ほら、お金。 取りに来いよ」

 橋本は小銭を掴んだ手をかざし、自分の真横の窓際に来るように促す。 

「お願いします! 赦してください、、、」

 声を震わせ懇願する竜之介を橋本は鋭い視線でねめつけ、小銭をジャラジャラと掌で踊らせ、無言の威嚇を続けた。

「はい、、、」

 竜之介は抗えない事を悟り、バストを手で覆い開け放たれた窓に背を向けて橋本の傍に立った。 

「竜之介。 オッパイ見せてくれよ」

「こ、この場所では赦してください! 外から見られてしまいます、、、」

「たつのすけ~~~! おっぱいみせてくれ~~~」

 橋本が竜之介を見てニヤリと笑みを浮かべたと思うと、手を口にあて窓の外に向かって大声で叫び出した。

「わっ、わっ、分りました! わかりましたから、、、」
 
 竜之介は慌てて橋本の腕を掴んで懇願する。

「くくっ。 おまえ、その格好で廊下を歩くと思っただけで乳首がおっ勃っているねえか!」

 目の前でプルンと揺れる竜之介の乳房を見て橋本は嬉しそうに言った。

「ハイ、お金。 お前は好きなものを奢ってやるよ。 俺はコーラなっ」

 竜之介は胸をさらして橋本の前に立ち小銭を受け取った。

「早く行ってこいよ。 竜之介」

「ホントにこの恰好でいくんですか、、、」

「もちろん」

「赦してくださいっ! 無理です、、、 お願いします! あっ、いやあああ~~」

 業を煮やした橋本は竜之介の身体を羽交い絞めにし扉の前まで引きづって行く。

「ィヤ・・・・ゃめてぇ!・・・・」
 
 橋本はドアを開け竜之介は廊下に突きだされた。

「買ってこないと中に入れないからな」

 そう言い捨てて橋本はドアを閉めた。

――行くしかない、、、

 竜之介は硬貨を握りしめ、誰も居ない事を祈り給湯室に向かって廊下を駆けだした。

   
 
          ◆

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