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第6章 コウジ  ―休日出勤2日目―
2020/08/03(Mon)
―翌朝7:00―

(ピンポン、ピンポン、ピンポン……)

 玄関チャイムの音がせわしなく鳴り、竜之介はガバッと跳び起きた。

「お~い開けろ~、竜之介~っ! 俺だ~っ! 迎えに来てやったぞ~」

(ドン、ドン、ドン、ドン)

「橋本チーフ?! うそっ、、、 こんなに朝早く」

 なおも橋本はドアを叩きながら大きな声でがなる立てている。

――どうしよう、、、 着替えなきゃ、、、

 ナイティで寝ていたことを橋本に知られたくはなかった。

 慌てて着替えようとベッドを抜け出したが、橋本はドアノブをガチャガチャさせ大声を出すのをやめようとしない。

――静かにしてっ! 隣のおばちゃんが来ちゃうよ、、、

 越してきたばかりの隣の部屋の住人は、気難しいそうな中年のOLで、理恵と騒いでいる時に怒鳴りこまれた事があった。

「開けますから大きな声を出さないでくださいっ!」

 竜之介はドアに走り寄り押し殺した声で言った。

「何してんだよ。 早く開けろよ、竜之介~~」
(ガチャ、ガチャ、ガチャ)

――ちくしょお、、、

 竜之介はやむなくドアを開けた。

「お~っ! 可愛いねえ、竜之介。 寝る時もみちるちゃんで寝てるのかあ」

 橋本は白のチビTとピンクのフレアパンツを着た竜之介を舐めまわすように見つめ、ズカズカと部屋に上がり込み、どかっとベッドに座りこんだ。

「お前の部屋に来たのは久しぶりだけどまるで女の子の部屋だな」

 橋本は壁に吊り下げたワンピースやキャミソールを見てニヤリと笑みを浮かべて言った。

 昨夜とは打って変わった橋本の態度に竜之介は戸惑いを覚える。

「あのぉ、、、 会社へは9時でよかったんですよね?!」

 竜之介は手で胸を覆いながら橋本に強い口調で言った。

「ふふっ。 ちゃんと女の子の声で喋って賢いじゃん」

―――どうせ普通の声で喋っても許してくれないくせに、、、

「そうだけどさ。 守衛に時間外届けを出しに行ったら、今日は俺達だけだったからさあ。 お前に会社でもOLごっこをやらしてやろうと思いたったって訳さ」

「えっ?! 冗談でしょ、、、」

「いや、本気さ。 この前、山科システム行ったときだってお前凄い楽しそうだったぜ。 電話で言っても言うこと聞かないと思ってわざわざ迎えに来てやったんだ」

 会社の外で滅多に会わない外部の人間相手に演じたのとは訳が違う。

 他に出社予定者がいないといってもトラブルがあれば急遽出社する人もいるのだ。

「そんなこと、無理です! 許してください。 チーフ、、、」

 こんなむちゃを言うならもう手伝わないぞと喉まで出かかった。

 橋本に握られている弱みを考えると、もう殆ど完了している韓国の見直し案件は交換条件には弱すぎる。

「いつも朝にシャワー浴びるんだろ?! その間に俺が着ていく服探しておいてやるから」

 そういうと、橋本はクローゼットに歩み寄り勝手に服を物色し始めた。

「早く支度しろよ!」

「、、、はい」

 竜之介は仕方なくチェストから下着を選んで、バスルームに向かった。


          ◆



 着替えに用意していた下着が見当たらない。

 シャワーを浴び、バスタオルを巻いただけの恰好で竜之介はバスルームを出た。

――やっぱり、、、

 ベッドに腰を下ろした橋本がショーツを指に引っかけグルグル廻していた。

「安心しろ。 何もしねえよ。 朝からエロモード突入して仕事する気がなくなったら俺が困るからなあ。 今日の下着はコレだ」

 橋本が背中に手を廻し、背後に隠していた黒のランジェリーを取りだして竜之介に向かってかざした。

「チーフ! 女装して出勤するのは無理です! 赦してください、、、」

「ぐずぐずすんなよ、竜之介~。 それとも出勤前に俺の新鮮ミルク、欲しいのか?」

「あっ、いえ、、、 わかりましたから」

 竜之介は、隣の部屋を気遣うことなく大声で話す橋本に怖気づいた。

「あっ、、、」

 橋本が持つブラジャーに手を伸ばすと、スッと手が引っ込められてしまった。

「先にバスタオルを外せ」

 橋本はブラジャーに頬ずりしながらニヤニヤ笑って言った。

「あぅぅ、、、 はい、、、」

 竜之介は明るい部屋の中でバスタオルを取り、湯上りの紅潮した素肌を橋本にさらして下着を受け取った。

――恥ずかしい、、、、

 手にした黒い下着は、女装して何度目かのデートの時、理恵にランジェリーショップで買ってもらった物だった。

 理恵との思い出の下着を身に着けていくその一部始終を『ふん、ふん』と橋本は鼻息を鳴らし、じっと眺めている。

「それはハーフカップブラっていうのか? 乳首が見えそうだな。 あの女と露出プレイする時に着てたのか?!」


――あぅぅ、、、 言わないで

 理恵との野外での恥戯を見られている橋本のいたぶりの言葉は、竜之介の被虐心を一気に昂らせていく。

 メイクを施し、髪を整えている間も橋本は引き寄せた椅子の背に肘をつき、竜之介の変身を楽しそうに眺め続けた。

「やっと出来たか。 女の身支度ってのは時間がかかるよなあ。 しかしこうやってみるとお前、マジで女にしか見えんなあ」

 橋本が鏡を覗きこみしみじみと言った。

「今日はこのスーツで出勤だ」

 橋本がクローゼットから引っ張り出してきたものは水色ののミニ丈のスーツだった。

――理恵に貰ったスーツ、、、

 橋本が手にしているスーツを目にして竜之介は胸が締めつけられた。

 理恵が着ていたのを竜之介がねだってアメリカに旅立つ前に貰ったもので、まだ袖を通したこともないスーツだった。

「おっ、いいじゃん。 いつでもパンチラサービス出来るなあ」 

 橋本に見詰められながら身に着けたスーツは思いの他タイトな造りで、竜之介の身体にぴったりと張り付き、スカート丈は思った以上に短くて股下10センチ程しかない。

 少しかがめばショーツが覗けそうなシロモノだった。

「さあ、行くぞ。 竜之介」

「、、、はい」


          ◆

 橋本の運転する車でオフィスのあるビルに着くと、守衛室という関門が待っていた。

 顔見知りの守衛の前で橋本が入館の記帳をしている間、竜之介はドキドキしながら平静を装い佇む。

「届けより遅くなるようでしたら、事前に声をかけてくださいね」

 竜之介は守衛に会釈して、手続きを済ませて歩き出した橋本を追った。

「へへっ。 ドキドキしたか? お前は山科システムの社員ってことにしてあるからな。 ほい。 これだ」

「えっ!? はい、、、」

 橋本はエレベータの中で竜之介の首に来訪者用の”GUEST”と書かれたIDをぶら下げた。


          ◆

「戻りました、、、」

「おう、サンキュー」

 竜之介は両手にスターバックスのコーヒーカップを持って開発室に戻った。

 定食屋で橋本と昼食を摂り、オフィスビルの前まで戻った時、食後のコーヒーを買ってきてくれと命じられたのだった。

 日曜日のオフィス街なので定食屋もスターバックスも普段程には込んではいなかったが、竜之介に顔見知りに会わないかヒヤヒヤする時間を過ごさせたのは橋本の意地悪に違いない。

 橋本の態度が昨日と一変したのは、昨夜でほぼ仕事の目処がついているからだろう。

 しかし午前中は何も仕掛けてこなかったし、おそらくこの仕事が終わるまでは淫らに迫られることはないだろうと竜之介は思っていた。

「どうだ?! 後どれくらいで出来る?」

 コーヒーをすすりながら竜之介の胸元を覗きこむように橋本が尋ねた。

「そうですね。 もう少しです。 後1時間ぐらいですかね」

「そっか~! 1時間かあ」

 橋本は嬉しそうに言うと、直射日光を避けるため半分フラップを閉じていたブラインドを上まで巻きあげ、窓を開け放つ。

 梅雨明け間近の真夏を思わせる日差しがオフィスの中を照らし、湿気を含んだ生温かい風が吹き込んできた。

「冷房は女性の身体にはよくないらしいし、今日は天気がいいから窓を開けた方が気持ちいいだろ?!」

 他の窓も同じように開けていく橋本を恐怖を覚えながら竜之介は眺めていた。

「熱いんじゃないのか?! 服を脱いでもいいぜ、竜之介」

「はい?!」

「遠慮せずに脱げよ」

「いえ、、、 いいです。 大丈夫ですから、、、」

「俺は気にしないから。 どうぞハ・ダ・カでくつろいで仕事をしてください」

―――始まった、、、

 指示書改定の先が見えて安心したのか、橋本は露骨な態度で竜之介を弄び始めた。

「会社の中では赦してください、、、」

「ふふっ。 会社の中だからこそお前は嬉しいんだろ?!」

「ちっ、違いますっ」

「ふふっ。 まあ、そういうことにしておいてやる。 とにかくその暑苦しいスーツを脱げよ、竜之介」

「あぁぁ はい、、、」

 竜之介はスーツのボタンを一つずつ外していく。

「向かいのビルから誰かが覗いてくれるといいな。 なあ、竜之介?!」

 橋本が窓を開け放った訳が分った。

 窓に目を向けると向かいのビルとはかなり離れているので窓際に立たない限り見られないとは思うが、窓が開け放たれていると思うだけで恥ずかしさが増してくる。

 橋本は自分の席に戻って竜之介がスーツを脱いでいくのをニヤニヤ眺めていた。


          ◆

 竜之介はブラとショーツだけの下着姿でパソコンに向かい、仕様書を仕上げていく。

―――この作業が終われば、きっと、、、

 作業が進むにつれ、その刻が近づいてくる皮肉に竜之介の心は妖しくざわめいていた。

「竜之介。 喉が渇いた~。 飲み物買ってきてくれ」

「えっ?! もう赦してください、チーフ、、、 守衛さんに気付かれちゃいます、、、」

 外出するには守衛室の前を通らなければならない。

「ふふっ。 今度はスタバのでなくていいよ。 給湯室の自販機のでいいや」

 橋本はポケットに手を突っ込んでチャラチャラ音をさせながら小銭を探った。

「は、はい、、、 分りました」

 竜之介がスカートに手を伸ばすと、すかさず橋本が制した。

「着なくていいぞ。 その恰好で行け」

「そっ、そんな、、、 無理です!」

「どうして?」

「だって、、、 誰かに見られたら、、、」

「誰もいないさっ。 休日出勤は俺達だけだったろ?! もし誰かに見られたとしても何か問題あるか? 性器を露出してるわけじゃないしさ。 だろ?!竜之介くん」

「そっ、そんなぁ、、、」

「ほら、お金。 取りに来いよ」

 橋本は小銭を掴んだ手をかざし、自分の真横の窓際に来るように促す。

「お願いします! 赦してください、、、」

 声を震わせ懇願する竜之介を橋本は鋭い視線でねめつけ、小銭をジャラジャラと掌で踊らせ、無言の威嚇を続けた。

「しょーがねーなあ。 ブラインドを下ろしてやったぜ」

 橋本は立ち尽くす竜之介に業を煮やし、ブラインドを下ろしたが、フラップは開いているので外は丸見えだった。

「はい、、、」

 竜之介は抗えない事を悟り、バストを手で覆い開け放たれた窓に背を向けて橋本の傍に立った。

「ハイ、お金。 俺はコーラ。 お前は好きなモノを買っていいぞ」

 竜之介は胸をさらして橋本の前に立ち小銭を受け取った。

「早く行ってこいよ」

「ホントにこの恰好でいくんですか、、、」

「もちろん」

「赦してくださいっ! 無理です、、、 お願いします! あっ、いやぁぁ」

 業を煮やした橋本は竜之介の身体を羽交い絞めにし扉の前まで引きずっていく。

「ィヤ……ゃめてぇ!……」

 橋本はドアを開け竜之介は廊下に突きだされた。

「買ってこないと中に入れないからな」

 そう言い捨てて橋本はドアを閉めた。

―――行くしかない、、、

 竜之介は硬貨を握りしめ、誰も居ない事を祈り、給湯室に向かって廊下を駆けだした。



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