FC2ブログ
2020 07 ≪  08月 12345678910111213141516171819202122232425262728293031  ≫ 2020 09
第6章 コウジ  ―休日出勤―
2020/08/02(Sun)
 週末の金曜日、竜之介はチームスタッフの中島と昼食を済ませ、オフィスへ戻りながら明菜の事を考えていた。

 相席になった総務部のスタッフが、父親の看病の為に帰省していた明菜が、一昨日から復帰しているという。

『前ははっきりとモノを言う人だったでしょ?! ところが人が変わったみたいに大人しいの。 まだお父さんの容体が芳しくないんじゃないかしら?!』

 同僚が言った明菜の様子は、竜之介を複雑な気持ちにさせた。

 親の看病というのは嘘で、明菜は竜之介を公園で放置した日に並木に連れ去られ、10日以上も富岡達の調教を受けていたのだ。

 そして富岡が明菜を解放したということは、明菜の調教が終わったということだろう。

 ア×ルとヴァギナを同時に犯され、明菜の野獣のように叫びながらよがり狂う痴態を思い浮かべると本当に現実だったのか今でも信じられない。

 目隠しされていたので顔を見た訳ではないが、富岡の口ぶりとお尻にあった蝶の痣はまぎれもなく明菜だ。

――申し訳ないけど、今さらボクがどうしようもしてやれない、、、

 玲奈ママに性感が昂る薬を投与されているらしいと聞き、明菜らしい女のあの狂ったような痴態の異様さに得心がいった。

 あのまま妖しい薬漬けにされて、闇の世界に沈まされてしまわないかと案じていたのだが、とにかく仕事に戻っている事に少しは救われる気がした。

 一人の人間をあんな風に平然と扱う彼らの恐ろしさを思い知り、彼らに存在を嗅ぎつけられた理恵を絶対巻き込んではいけないと改めて思う。

 開発室に戻っても、頭によぎるのは恵理の事ばかりだ。

 昨夜‪10時頃‬、理恵から掛かってきた電話に出ず、留守電に切り替えた。

 いつも悦び勇んで出る理恵からの電話に初めてのことだ。

 富岡が自分と理恵の関係に意味深な言い方をしたからだ。

 奴等との関係を断てない限り、愛する人が富岡達の毒牙に巻き込まれるかもしれないと思うと竜之介はいたたまれない。

 ただの脅しかも知れないが、自分が従っているうちは理恵には手を出さないだろう。

 結局、富岡達との関係を断つことが出来ないなら、恵理とは前のように付き合えないのははっきりしている。

 それに金で売られた相手に感じまくり、その人に女として恋心を感じ始めている自分は理恵を裏切っているに違いなく相応しくない。

 理恵が帰国するまでもうあまり時間が残されていない。

 理恵と別れ、関係を断つしか理恵を守るために取りうる手段を今の竜之介には思いつかなかった。

 留守電に残された理恵の声を聴いて竜之介はボロボロ泣いた。

 そして、泣きながら打った別れを告げるメールを理恵に送った。


       ◆


「どこ行くんですか?! さっきから何か心ここにあらずって感じですよ」

 開発室の入口を通り過ぎていた竜之介に中島が声を掛けた。

「あっ、いや、、、別に」

 少し照れたように笑みを浮かべ、竜之介は振り返った。

「それにしても速水さんの肌ってホントに白くてとっても綺麗ですよね~っ。 羨ましいくらい」

「なんだよ、それ、、、」

 中島が竜之介の顔を見つめて、しみじみと言った。

「何か特別にお肌のお手入れしてるんですか?」

「そ、そんなもんしてないよ。 男だしそんな必要ないしさ、、、」

「最近、テレビで女装コンテストってよくやってるじゃないですかあ。 速水さんなら良い線いくと思いますよ」

「バ、バカなことを、、、」

「入口でつまんね~ことくっちゃべってんじゃねえよ。 まっ、竜之介だったら優勝間違いなしだなっ」

 竜之介の身体が思わずビクッとすくむ。

 韓国出張でいないはずの橋本が二人を割って入るようにして話しかけてきた。

「あれ~っ?! 橋本チーフ、お帰りなさ~い。 戻られるのは来週じゃなかったでした?!」

「あ、、、 お疲れ様です」

 愛想を振りまく中島の隣で竜之介もペコリと会釈した。

「おう、ただいま」

「韓国の開発チームはいかがでした? 今度は私も連れていってくださいよ~」

「またいつかな。 あっ、そうだ。 竜之介に頼みがあるんだ」

「えっ?!」

 橋本は竜之介の肩を抱き、開発室に入っていった。


          ◆

 竜之介は緊張した面持ちで橋本のデスクの傍らに立っている。

 アムールでどんな目にあわされたのか橋本は知っているに違いない。

 そのことできっとネチネチと嬲られると覚悟していた。

「山科のおっさん、なんか言ってきたか?」

――やっぱり、、、

「え、ええ、、、 仕事の方はスタッフの方とメールのやり取りで済んでいるんですけど、、、 何度か社長から電話が、、、」

「で、どうした?! ばれなかったか?」

「、、、電話には出ませんでした」

「ふふっ。 あのおっさんマジで気にいってるよなあ~、お前の事。 一度、デートしてやればどうだ?!」

「、、、そんなこと」

 橋本の白々しい言い方に竜之介は怒りを覚えた。

「でもあのおっさん、『俺のイチモツは凄くデカイんだぞ!』って自慢してやがるから、突っ込まれてみたいんじゃないのか?! くくっ」

 息が止まりそうになった山科の色黒のボテッとした重みのある肉茎が脳裏に思い浮かび、竜之介は怖気立つ。

「あの、チーフ、、、 ボクに頼みたいことってなんなんでしょう?」

 竜之介はだんだん声が大きくなっていた橋本の話を遮った。

「おう、そうだったな。 明日、休日だけど出勤できるか?」

「えっ?! 何ですか?」

――また何か企んでる、、、

 竜之介は不安で胸が騒ぐ。

「ちょっと俺の方の仕事を手伝って欲しいんだ。 実は韓国のラボへの開発仕様に問題が発覚してさあ。 早急に修正しなきゃプログラマー達が遊んでしまうんだ。 出来れば月曜日にはあっちに持っていきたいんだがな」

「どんな不具合なんですか?」

「通信系の部分だからお前にチェックしてもらうのが一番早いし、安心なんだけどよ」

「あっ、はい。 そういうことなら、、、 大丈夫ですけど、、、」

「そうか。 じゃあ済まんが頼む」

「わかりました、、、 あのぉ、それで出るの、ボクだけですか?!」

「ああ。 お前だけさ。 出来ない奴が何人いても一緒だからな」

 確かに韓国ラボの案件は、会社にとって重要なもので通信関係も得意な竜之介が手助けするというのはもっともらしい理由なのだが、それだけで終わるとは竜之介にはとても思えない。

 何よりもニヤリと笑って電話をかけだした橋本の表情がそれを物語っているように見えた。

――だれも居ないオフィスで、、、

 身体が女性に近づくにつれ、次から次へと襲い掛かる淫らな魔の手に竜之介は深いため息をついた。

          ◆


 翌日の土曜日、普段と同じ時間に出社し、橋本と二人で開発仕様の見直しを始めた。

 二人きりの開発室の中でいたぶられるかと案じていたが、韓国ラボを育成する責任を負い、出来上がり次第再び韓国に行く予定の橋本は本気で竜之介のアドバイスを求め真剣に取り組んでいる。
 
 橋本の態度にこの案件を手伝っている間は何もしてこないのだろうと安堵し、竜之介は仕事に没頭した。

「なんとかなりそうか、竜之介!?」

 ‪夜7時‬を過ぎた頃、橋本が不安げに尋ねてきた。

「はい。 だいたい目処は付きましたよ。 後は仕様書に落とし込むだけですから、後4~‪5時‬間もあれば完成すると思います」

「サンキュウ!  助かったぜ~。 さすが竜之介だ!」

「どういたしまして」

 竜之介は自分だからこそ短時間で問題点を解決出来たという自負があり、橋本の言葉を素直に嬉しく感じた。

「今日はこれぐらいにして残りは明日にしようや。 腹減っちまった」

「でも、今から頑張れば今日中に出来ますよ」

 竜之介は二日続けて休日が潰されるのは避けたかったし、橋本に残ってもらう必要もなかったのでこのまま残って一人で仕上げてしまいたかった。

「守衛室に泊まりの届け出してないしさ~。 お礼に飯おごるからよ」 

「で、でも、、、」

「それを持って韓国に行くのは月曜日だし、明日中に出来るなら問題なしさ。 いつもの焼き肉でいいだろ!?」

「あ、、、 は、はい、、、じゃあ」 

――会社の人もよく行く店だし、仕事が終わるまでは無茶はしてこないはず、、、

 倉庫での出来事以来、気持ちはすっかり橋本に飲まれてしまっていた。


          ◆


 よく二人で行っていた安い焼き肉屋で食事する橋本は、倉庫で口淫を迫った橋本とはまるで別人だ。

 竜之介ア×ルを犯した事など無かったかのように、平然と肉を食べ、生ビールを飲み他愛のない話で橋本は大口を開けて大笑いしている。

「竜~っ! 早くホルモンを喰ってしまえよ~。 締めのうどんが喰えないじゃないか~」

「はい、はい。 相変わらずホルモンは嫌いなのに、ホルモン鍋のうどんだけは好きなんですね」

「うるせ~! 牛の臓物なんて人間の喰うもんじゃないぜ」

「でもその出汁があるから旨いんですよ」

「汁ならいい。 このゴムみたいな触感のビラビラしたモンが俺のうどんにくっ付いているのが許せん!」

「そうですかねえ、、、 美味しいのに、、、」

 つまらない事で御託を並べる橋本は可笑しいが、以前のように素直にはとても笑う気持ちにはなれない。

 早く終わって、その後橋本が何も言ってこないことを願って竜之介は黙々とホルモンを口に運んだ。


関連記事
この記事のURL | ボクの中のワタシ | CM(0) | TB(0) | ▲ top
<<第6章 コウジ  ―休日出勤2日目― | メイン | 第6章 コウジ ― 恋心 ―>>
コメント
コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する


▲ top

トラックバック
トラックバックURL
→http://hazamashamenovel.blog59.fc2.com/tb.php/422-5cc07c09

| メイン |