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第4章 翻弄  ―復讐― 3
2010/08/22(Sun)
――明菜は何をする気だろう、、、 仕事の話なのかも・・・

 竜之介は胸騒ぎを抱えたまま、エレベーターに乗って階下に向かう。

 まさか昨夜みたいなことを総務部の中で就業時間中に仕掛けてくるとは思えないのだが、今の明菜は竜之介を虐め、復讐することを楽し

んでさえいるようで不安は拭えない。

 エレベータが総務部がある2階に着き、ドアが開くと明菜が腕組みをして立っていた。

「遅かったわね」

 ドアが閉まり、周りに誰も居ない事を確かめた明菜が低い声で言った。

「あ、ああ、、、 ごめん」

「付いてきて」

 明菜は不機嫌そうにプイっと顔を背け、総務部の方向へ歩き出した。

 仕方なく後を付いていくと、総務部の前を通り過ぎ、その奥にある女子更衣室の前で明菜は止まる。

「入って」

 更衣室のドアを開けて明菜は平然と言った。

「えっ?! だってココは、、、」

「今は誰も居ないわ! 私の言うことが聞けないの? ヘンタイのくせに!」

「あっ、、、 そんな、、、」

 竜之介の脳裏に昨夜明菜に晒した恥辱の瞬間の記憶が蘇る。

「さあ、入って!」

 背を押され、竜之介は否応なしに更衣室に足を踏み入れた。


          ◆
「あっ、止めてっ!」

 更衣室に入るなり明菜の手が竜之介のバストをむんずとつかむ。

「アンタ、梅雨時にこんなスタジャン着て熱いでしょう?! オッパイ隠すのも大変ね」
 
 明菜は竜之介の背後に回り、ジャンパーを肩から外そうとした。

「ダメッ! こんなところで人が来たらどうするのっ?!」

 竜之介は咄嗟に強く明菜を衝き飛ばす。

「痛いじゃない、、、 派遣さんの終業時間の5:15までまだ5分あるわ。 今日はアンタのイヤラシイ身体、明るいところで見てあげるから早く脱ぎなさい」

「で、でも、、、」

 会社の女子更衣室で下着姿になるなんてあり得ない状況に恐怖は消えない。

「ふん。 ここで私が助けて~~!って叫んだら貴方は強姦罪で立派な犯罪者よ。 3年以上の懲役だったかしら。 どうする?!」 

「そんな、、、」
 今の明菜ならやりかねないと思うとすーっと血の気が引いていく。 

「早く脱いでイヤラシイ身体、見せてよ」

――言うことを聞いて一刻も早くここから出なきゃ、、、

 明菜の自分に向けられた劣情は、恥ずかしい姿を晒すことできっと鎮まるはずだ。

 そう思って服を脱ぎかけるが、ふとシャツのボタンに掛かる手が止まる。 今日の下着はいつもにも増して見られたくないモノを身に着けていた。

「早くしないとみんな、戻ってくるわよ」

 竜之介は覚悟を決め、素早く服を脱いでいった。

「えっ?! なんて派手な下着つけてるのっ?!」

 竜之介の身体を飾るランジェリーは、真っ赤なレースがふんだんにあしらわれたものだが、1/3カップのブラジャーは乳首を覆うことが出来ず、ショーツはGストリングでヒップの割れ目に隠れる布はひも状の煽情的なものだった。

「何恥ずかしがってるのよ。 私に見られるのを分ってるくせにそんなの着てくるなんてアンタおかしいんじゃない?! 私にチェックされるのが楽しみなのね?!」

「ちっ、違うっ! そんなことない、、、」

「ふっ。 じゃあどうしてよ?」

「そっ、それは、、、」

 今朝、ホルモン剤の服用をチェックされた後、並木が選んだ下着を着せられた事を言う訳にはいかない。

「ほらっ、何も言えないじゃない」

 竜之介は羞恥に頬を紅く染め、恥ずかしい下着姿を眺める明菜の視線にじっと耐えるしかなかった。

 明菜が床に散らばる竜之介の服を拾い集めている。

 何をするのかと眺めていると明菜は右端のロッカーに投げ入れてしまった。

「なっ、何するの?!」

「アンタの男の子用の服は私のロッカーに預かっておいてあげる。 さっ、早くこのロッカーの中に隠れて。 もう派遣の事務の女の子たちが退社する時間だからここはにぎやかになるわよ」

 竜之介の背後のロッカーの扉を開けて明菜が言った。

「えっ? まだ2分ある。 早く服を返してっ!」
 更衣室に掲げられている時計の針は5:13を差している。

「うふっ。 この時計3分程遅れてるのよ」

「うそっ!? そっ、そんなこと、、、」

 服を取りだそうと明菜ともみ合っていると、女性の談笑する声が廊下から聞こえてきた。

「あららっ、、、 さっ、早く隠れないと犯罪者になっちゃうわよ~」

「あぁぁ、、、 ひどいっ」

 この状況で竜之介に選択肢はない。

 竜之介は慌ててロッカーの中に身体を滑り込ませるのと同時に更衣室のドアが開き、幾人かの若い女性が入ってきた。

「お疲れ様」

「あれ、山瀬さん。 どうしたんですか~?!」

「ああ、この前辞めた中塚さんからロッカーに忘れ物をしたかもって連絡があったから探してるの」

「そうなんですか。 で、あの子、何を忘れたって言ってるんです?」

 声の主が明菜に近づいてくる様子に竜之介は心臓が止まるかと思うほど恐怖が走った。

「ポーチらしいんだけどね」

――お願いっ! 早く閉めてっ

 明菜はロッカーの扉をわざと半開きにしたまま女子社員に向かい合っている。

 退職した中塚という女の噂話が始まり、明菜は時々視線を向けては焦る竜之介の様子に満足そうに笑みを浮かべ話し続けた。

「じゃあ、私、着替えますね」

「あっ、ごめんなさい。 邪魔だったわね、陽子ちゃん」

 竜之介が潜むロッカーの隣がその陽子という女のものらしく、明菜は身体をずらし扉を閉め掛ける。 

 扉が閉じる間際に横切った陽子の顔が一瞬見えた。 竜之介も何度か話したことがある総務の女の子だった。

――ひっ、、、 気付かれなかった?!

 真っ暗なロッカーの中で絶対に音を立てるまいと身を固くして耳をそばだて様子をうかがう。

 明菜は暫く他愛のない会話を続けた後、更衣室を出ていってしまった。

――うそだ、、、 どうしたらいいんだ

 更衣室には次々と女子社員達がやってきてはワイワイとお喋りをしながら着替えを済ませて更衣室を後にしていく。

 その間、誰も間違って扉を開けない事を竜之介は祈り、身じろぎもしないで息をひそめて時間が過ぎるのを待った。

 どれくらいの時間が過ぎたのだろうか、パタリと人の出入りが絶え、更衣室に誰も居なくなったような気がした。

――6時半くらいになってるのかな、、、 早く戻らなきゃ

 竜之介が勤めるデジタルシステムワークスで制服を着るのは、総務・経理と営業事務の女性で、締日や決算の時以外は制服組は遅くても7時には退社することを竜之介は知っている。

 竜之介は直ぐにロッカーを出て脱出するか、完全に誰も居なくなるまでもっと待つか迷っていた。

 明菜に呼び出され何も言わずに席を離れていたので、少し焦りを感じだしている。

 明菜がここに潜んでいることを誰かに告げ口しないとも限らないし、いつまでもこんな下着姿でいるのはいかにもまずい。

 とにかく服を着ようと竜之介は決心し、もう一度耳を澄ませ、室内に誰も居ないと確信して扉を開けた。

 一目散に服が投げ込まれた明菜のロッカーに駆け寄り扉に手をかける。

(ガチャ、ガチャ、・・・)

「うそっ!?」

(ガチャ、ガチャ、ガチャ・・・) 

 明菜のロッカーには、鍵が掛けられていた。

 力を込めていくら引っ張っても扉は開かない。

――ウソだ、、、 どうしよう、、、

 竜之介はショックで茫然としてしまったが、ハッと気付き慌てて再び元のロッカーの中に駆け戻る。

――明菜が戻るまでこのままいるしかないのか、、、

 明菜の歪んだ復讐に翻弄され続ける竜之介は、ロッカーの中でただ時間が過ぎるのを待つしかなかった。

           ◆

――はっ、、、 明菜?!

 誰かが更衣室に入ってきた。

 少し離れたロッカーのカギを開けている様子で、やがて扉が開く音がした。

――明菜のロッカー?!

 ゴソゴソ物音がして、そして足音が竜之介の潜むロッカーの前で止まり、突然、扉が開いた。

――ひっ、、、

 竜之介は身体をこわばらせ、目を固く閉じたまま立ちつくす。

「いつまでサボってんだよ。 助けに来てやったぜ」

――えっ?!

 扉の向こうに立っていたのは橋本だった。

「早く服を着ろ。 こんなとこに居るの見られたら俺まで変に思われちまう」

 橋本は竜之介に鷲掴みにした服を押しつけた。

「しかし、明菜がお前の事を女っぽい身体になってるって言ってたのはこういう事だったんだな」

 橋本は竜之介のブラジャーからこぼれるバストを見て驚きの声を上げた。

 膨らんだバストを初めて橋本に見られる恥ずかしさにかぁーっと身体が熱くなってくる。

「女っぽいなんてもんじゃないぜっ! まるで女のオッパイじゃねえか、竜之介」 

 橋本は慌てて服を身に着ける竜之介の仕草をいやらしい目付きで眺め、下卑た笑みを浮かべながら言った。

「しかし明菜には困ったもんだ。 お前があまり長い間席を空けてるからどこへ出掛けたのかって聞いたら、内線電話を受けて慌てて出ていったって言うからピンときたんだ」

――えっ!?

 竜之介には意外だった。 明菜の行動は橋本が指図しているか、少なくとも知っているとばかり思っていた。

「こんなムチャな事をしてるとは思いもしなかったぜ。 さあ、早くここから抜けだすぞ」

 橋本は服を着終わった竜之介の肩を抱いてドアに向かう。

「女の恨みってのは恐ろしいなあ、竜之介。 明菜がこんな怖い女だとはなっ」

「、、、はい」

 二人は廊下の様子を確認してそっと女子更衣室を出た。

 竜之介は長時間の極度の緊張が解けホッとしたからなのか、身体に思うように力が入らない。 よろめく身体を橋本に抱きかかえられた。

「おいおい、大丈夫かよ?!」

「だ、大丈夫です、、、」

「ブラ男なのを隠すためにこんな季節外れのスタジャンを着てるのかと思ってたが、こんなでかいおっぱいを隠しているとは思わなかったぜ。 ふふっ。 お前、これからどうするつもりなんだ?! いずればれちまうぜ」

「あっ、、、」

 肩を抱く橋本の手がスタジャンに潜り込み、シャツの上から乳房を握ってきた。

「橋本さんっ! やめてください、、、」

「くふふっ。 ぷにぷにして気持ちいいなあ、お前のオッパイ! 大人の女っていうより女子高生みたいなプリンッとした固さがある。 といっても俺は女子高生とやったことはねえから想像だけどな。 あははっ」

 橋本は竜之介の乳房を弄びながら上機嫌でエレベータに向かった。


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