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第4章 翻弄  ―いたぶり―
2020/07/19(Sun)
「おはよっ」

 エレベーターを降り、オフィスへ向かって廊下を歩いていると女性の声が聞こえた。

――誰?! あっ、、、 明菜だ、、、

 振り返ると明菜が給湯室から顔を出して睨んでいた。

「なっ、なに、、、?」

「いいからっ! こっち来て」

 手招きしながら明菜は給湯室の中に消えた。

――また何かされる、、、

 週末の屋上での事を思うと、心臓が早鐘を打つ。

 しかたなく給湯室へ入ると、薄暗い部屋の奥に明菜は場所を移していた。

「おはよ、みちるちゃん。 橋本さんに聞いたわ。 み・ち・る・ちゃんって名乗ってるんですってね~」

 近づくと明菜はいきなり竜之介の胸をむんずとつかんだ。

「あっ、、、 やめてっ、、、」

「今日はどんな下着をつけてるの?」

「、、、、、、」

「見せなさいよ」

「こっ、こんなところでは許してくれよっ」

「みちるちゃんの声で喋って!」

「あぁぁぁ、、、 許して、、、明菜さん、、、」

「うふふっ。 自由自在ねえ! 見事なものだわ。 感心しちゃう。 私の知らないところで随分練習したんでしょうねえ、みちるちゃん」

「、、、うん」

「さあ! 早く見せなさいよ!」

 誰が通るか分からない廊下の一角にある給湯室でいつまでも揉めているわけにはいかない。

「あぁぁ、、、」

 竜之介は廊下側に背を向けるように位置を変え、シャツのボタンをはずしていく。

 明菜は嬉しそうにシャツの胸ぐりを大きく開いた。 

「あら?! なぁ~に、これ、、、 随分地味じゃない、みちるちゃん。 上着に響かないようにベージュを選んだのね。 うふふっ」

「もっ、もういいでしょ?!」

 始業前のこの時間ならいつお茶やコーヒーの準備に人が来るかわからないので気が気ではない。

 竜之介はシャツの胸元を掻き合わせた。 

「ふふっ。 ヘンタイ君でも恥ずかしい~んだ?! アンタにお似合いの下着を買ってあげるわ」

「えっ!? いっ、いいよ、そんなの、、、」

「あらっ、遠慮しないで。 そんなダサイ下着なんてみちるちゃんに似合わないもの。 プレゼントしてあげるわ。 いいわね!?」

「、、、うん」

「じゃあ、楽しみに待ってるのよ」

 竜之介を残し、明菜は給湯室を出ていった。


          ◆
「開発室の備品管理は速水さんが担当でしたね」

「あっ?! う、うん、、、」

 昼食を終え仕事を再開した直後、不意に背後から明菜に声をかけられ、竜之介はビクッと身体が震えた。

 付き合っている頃は、総務の仕事で明菜が開発室に来るのが楽しみだったのだが、別れた後はなんとも気まずい思いがしていた。

 まして週末に恥ずかしい姿を見られた上に、今朝の事があった今は尚更だ。

「これ、在庫のチェックシートです。 今日の3時までに作成してくださいね。 頂きに来ますから」

 竜之介のデスクにクリップボードを置いた。

「うん。 わかった、、、」

「それと、、、 これ。 お昼休みに買ってきてあげたわ」

 明菜は小声で囁きながら赤いリボンで飾られた緑の小箱を差し出した。

「えっ、、、」

「3時に見てあげるから着替えておくのよ。 いいわね?!」

「む、無理だよ、、、」

「そんなこと言っていいの?!」

「、、、わかった。 わかったから、、、」

「絶対よ!」

 明菜はそう言い終えると他のスタッフのデスクへ向かい、何やら打ち合せを始めた。

 竜之介は職場に不似合いなオシャレな小箱を引き出しの中に仕舞った。

――ホントに買ってきた、、、 あんな軽くて小さな箱に入る下着って、、、

 竜之介はストリッパーが身に着ける様な煽情的なステージ衣装を思い浮かべてしまった。

「ふぅ~~」

 思わずため息を洩らすと、食事を終えて開発室へ戻ったばかりの橋本と目が合った。

「何だよ、ため息ついて。 竜之介、疲れてんのか~?!」 

 明菜が居ることに気付いた橋本がこれみよがしに言葉を続ける。

「まあ、社内恋愛は付き合ってる時も、別れた後も何かと大変なもんだ。 なあ、竜之介」

「はっ、はい、、、 あっ、いいえ、、、」

「ははっ。 どっちなんだよ?!」

――これ以上明菜を刺激しないで、、、

 恐る恐る明菜に視線を向けると、同僚と話しこんでいるようで橋本の声は聞こえなかったように見えた。


          ◆

――やっぱり、、、

 想像した通り、明菜に渡された小箱にはスパンコールが付いた真っ赤な紐と形容するのが相応しい上下のセットだった。

――どうしよう、、、 こんなに小さな下着じゃバストを隠せない、、、

 竜之介はトイレの便器の蓋に座り込み、小さな下着に込められた明菜の怒りの程を思い知った。

――とにかく着替えなきゃ、、、

 約束の3時が迫っていた。

 竜之介は狭いトイレの中で裸になり、小さな下着を身に着けた。

 ショーツはストリングスという代物でバックは紐状なので、タックから出ているぺニスは飛び出たままだった。


          ◆


 着換えを済ませ個室をでると、歩を進めるたびにフルフル揺れるバストに驚いた。

 手洗いで手をすり合わせているだけでも、不規則にバストが揺れる。

――どうしよう、、、 これじゃみんなにばれちゃう、、、

 乳首を隠すだけの面積しかないブラジャーには、乳房を支える機能がまったくない。

 廊下に誰も居ないのを確認し、大股に歩いてみるとタプン、タプンという表現が似合う程、乳房が上下に揺れた。

 心臓は息苦しいほどにバクバクしている。

――あぁぁぁ、、、 ボクは、会社の中でこんな恥ずかしい姿で平然と歩いてる、、、

 気付かれたら終わりだというスリルに魅入られたか、胸を隠さずに開発室の入口まで危うい歩みを続けた。

――ボクは何してるんだ、、、

 心細さと羞恥心に混じり、被虐のざわめきが潜んでいることを竜之介は知っていた。

 竜之介は大きく深呼吸をし、胸が目立たないような姿勢を意識してオフィスのドアをそっと開けた。
          

          ◆

 自席に戻り、仕事を初めて間もなく明菜が現れた。

「速水さん。 調査表、出来てますか~?」

「う、うん。 出来てるよ、、、」

 竜之介は背後に立つ明菜にクリップボードを手渡した。

「ありがとうございます」

 資料を手に持ったまま、明菜は立ち去ろうとしない。

――まっ、まさか、ここで確認するのか、、、

 『3時に確認してあげる』といった明菜の言葉が頭でリフレインする。

「ひっ!?」

 明菜が耳元に唇を寄せてきて竜之介は思わず縮みあがってしまった。

「ちゃんと着替えた?」

 明菜の囁きに、竜之介は無言で頷いた。

「給湯室で待ってるから、、、 それと着替えた下着、持ってきて」
 
 明菜はそう言い捨てて開発室を後にした。


          ◆

「もう、こんなことは許してくれよ、、、」

 朝と同じように薄暗い給湯室の奥で二人は向き合う。

「”みちる”の声で喋るのよ」

「あっ、、、 はい、、、」

「じゃ、見てあげる。 胸を拡げて」

 竜之介は背後を気にしながらボタンをはずし、胸を開いた。

「うふふっ。 いやらし~~っ。 でもアンタにお似合いだわ!」

 明菜は嬉しそうな声を上げ、竜之介のバストに息がかかるほど顔を近づけ、申し訳程度に乳首を覆う布地を食い入るようにじっと見つめる。

「ねえ~! 3日前より大きくなってるんじゃないの?!」

「あっ、やめて、、、」

 明菜が竜之介のバストを手ですくいあげ手を離すとプルンと乳房が揺れた。

「きゃっ! なによこれ、、、」

 竜之介の乳房のあまりに自然な弾力と揺れ方に明菜は驚きの声をあげた。

「もう、いいでしょ、明菜、、、 着替えさせて、、、 これじゃみんなにばれちゃうわ」

 竜之介は明菜の前でみちるの声を出すことが恥ずかしくて仕方がないのだが、思わず発する言葉自体が女言葉になっていたのが堪らなく恥ずかしい。

「だめ~~っ! 絶対ダメよ。 アンタにはヌードダンサーみたいな下着が似合いなのよ!」

「そんな、、、」

「しつこいわね! 明日からは今日みたいなベージュのおばさん下着は絶対ダメよ。 変態に似合いのセクシーでいやらしい下着で通勤しなさい」

「明菜、、、 お願いだから、もう許して、、、」

「そんなにこの下着が厭ならノーブラにしてあげましょうかっ?! それでもいいの?」

「あぁぁ、、、 ゴメン、、、 わかりました、、、」

「じゃあ、オバサン下着持ってきたんでしょ?! 後で着替えられないようにあずかっておくから」

 替えた下着が入った紙袋を明菜に手渡した。

「明日も楽しみにしてるからネ。 みんなにばれないように気をつけるのよ、みちるちゃん」

 明菜は勝ち誇ったような表情を浮かべて踵を返して、給湯室を出ていった。


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