FC2ブログ
2020 07 ≪  08月 12345678910111213141516171819202122232425262728293031  ≫ 2020 09
第4章 翻弄  ―恥辱の屋上― 2
2020/07/19(Sun)
――ウソ、、、 こんなに明るいなんて、、、

 屋上への扉を開けると辺りのネオンの灯りで思っていた以上に明るい。

 そして向かいのビルにはたくさんの窓に明かりが灯り、顔までは判別できないが人々の働いている姿がはっきりと見える。

 竜之介は指示通り、南端のフェンスまで歩き背を向けて立った。

――指示通りにしなくちゃいけないのか、、、

 暫く躊躇していたが、竜之介はジーンズを脱ぎ、そしてセーターを脱いだ。

 橋本は大きく膨らんだバストに驚き、今以上にネチネチと嬲られるようになるだろう。

 しかし橋本に富岡刑事のようなア×ルに淫らなことをする趣味があるとは竜之介にはどうしても思えない。

 公私ともに信頼し、面倒を見ていてくれていた先輩なのだ。

 屋上に吹く湿った風がスベスベに手入れした竜之介の脚をすーっと撫でた。


          ◆


 誰か屋上に昇ってこないか、隣のビルから誰かに見られないか、不安で不安で一刻も早く立ち去りたい!

 竜之介は下着姿のまま、じりじりしながら橋本の登場を待ち、既に10分近く経っていた。

――来ないのかな?! 後でこんなバカげたことを真に受けて待っていたボクを嘲笑うつもりなのだろうか、、、 後5分して来なかったら戻ろう、、、

「あっ、、、」

 その時、屋上への階段を昇ってくる靴音が聞こえてきた。

――あぁぁぁ、、、 橋本さんだよね、、、 こんな時間に他の人は上がってこないよね、、、


 足音の主が橋本である確証はない。

 恐怖が竜之介を包む。

 足音が止まり、鉄製の扉が軋む音が聞こた。

 言いつけられたように両腕を上げたポーズをとった。

 程なくガシャンと扉がしまる音が響いた。

 思わずしゃがみ込みそうになるが、言いつけを守らないと何か難癖をつけられるかもしれないと思い直し、不安に苛まれながらも背筋を伸ばし、非常口の方を見た。

――えっ、、、 女?! 女だ、、、

(カッ、カッ、カッ)

 近くのビルのネオンに浮かぶシルエットは確かに女性に違いない。

 それに近づく靴音は橋本のスニーカーの音ではなく、女性のヒールが刻む音だ。

 シルエットは竜之介の方へまっすぐに近づいてくる。

――だ、誰? どうしよう、、、
 
 竜之介は思わずしゃがみ込み顔を伏せた。

――ひっ! 助けて、、、

(カッ、カッ、カッ、カッ、カッ)

 ヒールの音が竜之介の真ん前で止まった。

――誰、、、

 薄目を開けると、ヒールの尖った爪先が見えた。

「立って待ってるように言われたんじゃないの?!」

――えっ?! 誰?

「立ちなさいよ、たっち!」

――ま、まさか、、、 明菜、、、

 竜之介が顔を上げると腕組みをして立っているのは、明菜だった。


 

         ◆


「立って!」

 竜之介は、おずおずと立ち上がる。

 両腕で胸と股間を隠して立ちすくむ竜之介の身体を明菜は一言も発することなく、舐めまわすように眺めている。

――あぁぁぁぁ、、、 ひどいよ、橋本さん、、、

 騙した橋本への怒りよりも、かつて愛し合った明菜に恥ずかしい姿を晒し続けることがこの上なく恥ずかしい。

ダメッ! 動かないでって言ったでしょ!」

 恥ずかしさに身体をもじもじさせると明菜の怒声が飛ぶ。

「ホントに女装趣味だったのね、、、」

 背後に回った明菜がくヒップに貼りつくショーツを撫でながら言った。

「あっ、やめてっ!」

「信じられない、、、 誰の下着を付けてるのよ! へっ、変態だわ、、、」

――あっ、、、

 今日付けている下着は明菜がお泊り用にと部屋に置いていたキャラクターをあしらったものだった。

 しかも、明菜と結ばれてからお揃いのモノを持とうと、二人で選んで買ったものだ。

 スポーツブラをやめろと橋本に言われ、バストを抑え込むものをと仕方なく選んで付けてきた。

「ご、ごめん。 明菜、、、」

「気やすく呼び捨てにしないでよっ! 貴方の部屋にあったあのパンストって、、、 自分で穿いてたものなのね?!」

「、、、、、、、」

「どうなのよっ?!」

 明菜は、俯いたまま黙っている竜之介に苛立ち声を荒げた。

「ごめん、、、」

 竜之介はコクリと頷いた。

 浮気と勘違いした明菜に一言も弁明することなく、詫びることも許しを乞うこともないまま二人の関係は途絶えた。

 明菜を繋ぎとめようとしなかったのは、明菜との関係を続けるよりも女装をもっと楽しみたかったからだ。

「私より女装趣味を選んだってことなのね、、、」

「あ、明菜、、、 あのね、、、」

「馴れ馴れしく呼ばないでって言ったでしよっ!  そのこだわりの女装姿、見てあげるから手をどけてっ!」

「たっ、頼むよっ! そんなに大きな声を出さないでっ」

 外を歩く人にまで届くんじゃないかと思える程の理恵の大きな声に竜之介は縮みあがる。

 竜之介が自分よりも”女装趣味”を選んだ事に明菜の感情は激しく昂っていた。

「早く手をどけてっ! でないとみんなに言いふらすわよ!」

「あぁぁ、、、 そんな大きな声を出さないで、、、」

――しかたがない、、、

 屋上に響き渡る怒声に竜之介は怖気づき、しかたなく両腕を下げた。

「手は、頭の上ってチーフに言われてたんじゃないの?!」

「ああぁぁ、、、 明菜、、、許してくれよ、、、」

 ゆっくりと両腕を頭上に上げ、身体を明菜に晒した。

「気持ち悪いわね、、、 付き合ってた女の下着つけて何が気持ちいいの? 詰め物で膨らんだ偽物のオッパイで女になったつもりなの?!」

 竜之介は頬を染め、顔を背けたままひたすら恥ずかしさに耐える。

 「何とか言いなさいよっ! 何よ、こんなオッパイ」と叫び、ブラジャーのカップを握った。

「あっ! 止めてっ!」

「えっ?! なに、、、 何なの、、、」

 一瞬、想像もしない手の感触に明菜はたじろぐ。

 そして乱暴に竜之介のブラジャーをずり下げた。

 瞬時に竜之介はしゃがみ込み胸を隠したが、一瞬目に入ったあるはずのない竜之介の豊かなバストに明菜は眼を剥いた。

「たっち、、、 あなたって、、、」

 泣きだしそうな表情を浮かべて明菜は言葉を絞り出した。

「ブラを取って!」

 一転、怒気を含んだ明菜の大きな声が竜之介を縮みあがらせる。

「「わかった、、、 わかったから大きな声を出さないでっ、、、」

――ああぁぁぁ、、、 恥ずかしい、、、

 竜之介は観念して、背中に手を回しブラジャーを外した。

 むしり取る様に明菜がブラを奪う。

「手をどけなさいよ!」

 竜之介は、バストを隠していた手をゆっくりと外した。

 かつての恋人に見事に膨らんだバストをさらす、、、 身悶えしそうな恥辱に胸が張り裂けそうだ。

 ピンと張った乳房の先端に薄ピンクの小さな乳首がフルフル震えている。

「どっ、どういうことよ、これ?! 手術したの?」

 竜之介は首を振った。

「女性ホルモン?!」

 竜之介は小さく頷いた。

「え~っ!? じゃあ、、、 貴方って女装が趣味じゃなくて、ホンモノの女の子になろうとしてるってこと?!」

 竜之介は思わず違うと首を振った。

 しかし、明菜に自ら望んだ事ではないと言っても仕方がないし、言っても分って貰えるとはとても思えない。

 思い直してコクリと頷き、顔を伏せた。

 ところが、これが明菜の怒りを煽ってしまう。

「それってどういうことなの?! 頭にきちゃう! じゃあ女になりたいくせに、ホントは男に抱かれたいくせに私と付き合ってたのね、、、」
      
「ごっ、ごめん、、、」

「よく見てあげるわ! 出来そこないのオカマの身体をっ!」

「あっ、止めてっ!」

 怒りにまかせて明菜は竜之介のショーツを引き下ろす。

「きゃ~っ!」

 竜之介の股間を目にして明菜は絶句した。

「こ、ここも手術したのね?」

 明菜はタックで出来た平らかな恥丘をみて驚きの声を上げた。

「ちっ、違う、、、」

「違うってどういうことなの?!」

 明菜は股間に手を伸ばし、ア×ルの手前に飛び出す亀頭を付き当てた。

「あうっ、、、」

 思わず竜之介の身体がピクンと跳ねる。

 もう逃げ出したてしまいたいのだが、極限を超えた恥ずかしさは身体を痺れさせ身動きが出来ない。

「あっ! 何なのコレは、、、」

 指の先には亀頭からにじみ出た先奔り液が付着していた。

 明菜は竜之介の身体を反転させヒップをネオンの光に晒し、股間を覗きこんでその仕組みをやっと理解した。

「信じられないわ、、、 こんなにまでして女のふりをしたいの? そんなに邪魔なら早く切り落としちゃいなさいよ」

「ああぁぁぁ、、、 ゆるして、、、」

「あなたみたいな変態と1年も付き合っていたのかと思うと悔しくて仕方がないわ」

 明菜の吐きだす息は『ふぅ~、ふぅ~』と怒りに震えている。

「ごめん、明菜、、、」

「何がゴメンよっ! 私の前で二度と彼氏面しないでっ! 橋本さんが言ってたわ。 喋る声まで女の子みたいな声を出せるんですってね! さあ! 女の声で謝って!」

「、、、、、、」

「うちの社長にバレたらアンタなんか絶対クビよっ! 私はアンタみたいな変態と同じ会社で仕事するなんてまっぴらゴメンだわっ! でも橋本さんは今アンタに辞められたら困るって言ってたから黙っててあげるっ! でも私に謝るのが条件よ!」

「、、、、、、」

「さあ、黙ってて欲しかったらその女の声で私に赦しを請いなさい!」

「明菜、、、」

「違うでしょ! ちゃんと女の声で私に許してくださいって言うのよ!」

 怒りを口にすればするほど、女のプライドをズタズタに切り裂かれた明菜の怒りは増幅する。

「あぁぁ、、、 明菜さん、、、 ゆ、許してください、、、」

 竜之介は、懸命に女声で明菜に詫びた。

 明菜の前で”女声”を出すのは気が狂いそうに恥ずかしい。

「あっくぅ、、、 なんて声なの、、、」

 竜之介の口から発せられた軽やかな女声に明菜は目を見張り、その見事な女声に更に怒りがこみ上げ涙さえ浮かべていた。

「アンタの服、階段の途中に置いておくわ。 誰かが通りかかってその恥ずかしい姿を見て貰えるといいわねっ!」

 明菜は竜之介の身に着けていたものを拾い集めくるりと背を向けた。

「そんな、、、」

「私の姿が見えなくなるまでそのまま立ってなさい! 手は頭の後ろで組んで! そう! そのままよ!」

 振り返った明菜は強い口調で言い捨て、非常口に向かって歩きだし、手にした服のひとつをコンクリートの上に叩きつけた。

――明菜、、、

 竜之介は非常口の鉄製の扉が閉じられた途端、その場にしゃがみ込み、ネオンの光が届いていない建物の陰に這うようにして身を隠した。


  

        ◆


 屋上や階段に捨てられていた下着やセーターを拾っては身に着け、エレベータのあるフロアに向けて階段を降りる。

 踊り場から覗くと一番下のステップのところに最後の1枚のジーンズが置かれていた。

 竜之介は耳をすまして階下の様子をじっと窺う。 

 心臓の鼓動は苦しいくらいに早鐘を打っていた。

――いつまでもショーツ1枚のままでいるわけにはいかない、、、

 意を決して階段を駆け下り、ジーンズを掴んで踊り場まで駆け戻る。

 ジーンズに足を通し、身づくろいを整えて階段を降りると、ちょうどエレベータのドアが開く音がした。

「ひっ!、、、」

 意地悪そうな笑みを浮かべた橋本だった。

「ずいぶん遅いから迎えに来てやったぜ。 ちゃんとイヤラシイ下着姿、見て貰ったのか?」

「ひどいですよ、チーフ… どうして明菜に、、、 黙っててくれるって言ったじゃないですか、、、」

「前にも言っただろ。 元々お前の行動を怪しんでお前の部屋に出入りするのを見かけた女の素性を調べてくれって言ってきたのは明菜だ。  黙っててやろうと思ってたんだけど、あの女は誰?ってうるさくてなあ」

「、、、、、、」

「お前のせいだぞ。 お前、明菜とはちゃんと別れてなかっただろっ。 明菜はまだお前に未練タラタラだったろ?! ちゃんと諦めさせてやるのは振った男の役目だぜ。 だからお前の今の姿を見たらようやく目も覚めたことだろうよ。 なっ?! あははっ」

「、、、ひどい」

「安心しろ、竜之介。 あの車に乗ってたサディスティックな女とどんな事してたのかは言ってないから。 女装クラブの仲間で、あれも男だよって言ってある。 今日のお前を見て信じたはずさ。 まさか自分でゲロッてないよな、竜之介?! あははっ」

 オフィスに戻るべく竜之介は橋本に肩を抱かれ、エレベータに乗った。
関連記事
この記事のURL | ボクの中のワタシ | CM(0) | TB(0) | ▲ top
<<第4章 翻弄  ―いたぶり― | メイン | 第4章 翻弄  ―恥辱の屋上―>>
コメント
コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する


▲ top

トラックバック
トラックバックURL
→http://hazamashamenovel.blog59.fc2.com/tb.php/389-0c2f2984

| メイン |