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第4章 翻弄 - パーラー -
2020/07/07(Tue)

《今日の撮影、頑張ってね~! みちるの可愛い画像が届くのを心待ちにしてます》

 シアトルの恵理からメールが届いていた。

「ふぅ~、、、」

――恵理は期待してるけどできれば今日の撮影、断れないかなあ?! でもドタキャンすると迷惑だろうし、行くしかないかあ、、、

 憧れていたJULLYの撮影日なのに、昨日の事があって女装姿で外出する事が怖くて竜之介の気分は重く沈んでいた。

「くっそーっ! どう考えてもあったまきちゃう、、、」

 朝食を食べながら昨日の渋谷東署での出来事を思い出すと、改めて怒りと恥辱が込み上げてきた。
 
――あんな取り調べがあるもんか! あいつら絶対ボクを弄んでただけなんだ、、、

 お尻の中にクスリを隠していないかと言いがかりをつけ、指でア×ルをかき回される行為に、図らずも感じてしまった自分が情けなくて、今でも信じられなかった。

「そうだ! 久しぶりにパチンコ、しちゃおっかなっ。  確かあの機種はもうホールに設置されてるはずだよね」

 そう思い立つと竜之介は少し胸のモヤモヤが晴れた気がして、通勤用のデイバックから小さなメモ帳を取り出した。

「あった! これだ」

 竜之介の勤めるゲーム開発会社・デジタルシステムワークスにはパチンコ・パチスロの開発チームがあり、同期のスタッフに新機種の攻略パターンを教えて貰ったばかりだった。

 週末は恵理と過ごす様になってからはとんとご無沙汰になっているが、以前は教えてもらった攻略法を駆使してスロットで随分と小遣いを稼いでいたものだ。

 次々と新機種と入れ替わってしまうので、ブランクの間にパターン情報を知っている機種がホールからなくなってしまうのも足が遠のいていた理由だ。

――JULLYとの約束は3時だから、、、 4時間は遊べる! あっ、、、 でも、、、 女装したままでパチンコ屋かあ、、、

 撮影現場には”みちる”として行くのだから、パチンコ屋へも女装姿で行くことになる。

 竜之介は今まで女装をしてパチンコへ行ったことが無かった。

 食事をしたり、ショッピングしたり短い間の人々との接触はドキドキして楽しめるのだが、パチンコホールでは腕が擦れ合うほどの近距離で隣り合う人と何時間も過ごすことになるので、ばれるのが怖くてずっと避けていたのだ。

――今日で恵理以外に見せる女装は最後だし、、、 え~いっ、行っちゃお~っと!

 ひとたび行く事に決めてしまうと心は踊り出し、竜之介はウキウキと身支度を始めた。

――そだっ! どうせなら約束のフォトスタジオとも近いし、会社の帰りによく行ってたパーラー・ビッグウェーブに行ってみよっかなっ?!

 たくさんの顔見知りが居るかもしれないが、今の女装術は完璧に近い自信を持っている。

 その証拠がJULLEYの長谷川や、機能の刑事だって身体の中を見るまでは分からなかった。

―――究極のみちるを見せつけちゃおう!

 竜之介は自分の思い付きにトキメキを覚え、パーラーで過ごす自分の姿を想像しながら念入りにメイクを始めた。

          ◆

――うわぁ~い!

 慣れるまでは初めてプレイする機械に少し苦戦したが、慣れてくると面白いようにボーナスゲームを引き当て、順調にコインは増えていく。

――うふふっ。 今日の目標の5万円に届いたかな?!

 とにかく女装にはお金が掛かる。

 各シーズンの何から何まで揃えなくてはいけないし、男の服と二人分だから大変だ。

 特に化粧品は、男としてはほとんどお金を必要としなかったジャンルだから割高に感じてしかたがない。

 恵理が着なくなった物をくれたり、買ってくれたりもするが欲しい物には際限がない。

 次第に女ぶりが上がって外に出れるようになると、アクセサリーへの憧れが芽生え、ブランド物の高額な事に閉口した。

 人に見せる為の女装は卒業すると決めているが、みちるとして恵理と愛し合う事は止めるつもりはまったくない。

 恵理が悦ぶようみちるを研く為に買いたい物が頭をよぎり、ついそれを身につけた姿を想像している自分に気付いて笑ってしまう。

――ボクってしようがないなあ、、、 あははっ

「凄いなあ、ネエチャン。 笑いが止まらんみたいやなあ」

 ボーナスゲームの派手な音楽が鳴るたびにチラチラ視線を送ってきていた隣のごつい体格のあんちゃんが、羨ましそうに声を掛けてきた。

 目が合い、竜之介は茶目っ気を出してウィンクを返してやると、あんちゃんは「ええのぉ~、ねえちゃん」と乱ぐい歯を剥き出しにしてニヤリと笑った。

「ついてるだけです。 うふっ」

 すこしドキドキしたが、女声で応えてやるとデレッとした顔をしてあんちゃんは下卑た笑みを浮かべた。

 時計に目をやると、JULLEYの長谷川に指定された時間が近付いている。

――あ~あっ、、、 まだまだ出そうだけど、メイクを直さないといけないしなあ、、、

 竜之介は諦めてスタッフを呼ぶボタンを押した。
 
「ぐえっ! な、何?!」

 椅子から立ち上がろうとした瞬間、いきなり背後から誰かに羽交い絞めされ、太い腕が喉をグイグイと絞めてきた。 

――だ、誰?! えっ?! こんな事するのはまさか、、、

「くふふっ。 随分勝ってるじゃん、竜之介~~。  飯おごってくれよ~」

――やっぱり、、、 ど、どうしよう、、、 人違いってとぼけようか、、、

 竜之介が直感した通り、羽交い絞めしているのは会社の先輩・橋本チーフだった。

 随分と確信をもった橋本の態度に竜之介は縮みあがり、どう対処していいのかパニックになってしまった。

―――わかるはずが、、、 どうしてわかってしまったんだろう、、、

 そこへ呼び出しボタンに反応したパーラーの店員が駆け寄ってくると首を絞める腕がスッと解かれた。

「お止めになるんですか?」

 竜之介はコクリと頷いて席を立ち、橋本に背を向けた。

――どうしよう、、、 どうしたらいいの、、、

 周りにも聞こえているんじゃないかと思うほど心臓が激しく鼓動を刻んでいる。

 橋本はうすら笑いを浮かべ竜之介をじっと見つめていた。

――ボクだって分ってるんだ、、、

 竜之介は積み重ねたドル箱を運ぶ店員の後を黙って付いていく。

 その後を橋本がピタリと付いて来ているのは気配でわかった。

          ◆

「ずいぶん儲けたもんだな、竜之介~」

 景品交換の小さな窓口から差し出された6万円を超える札をみて橋本が大きな声を上げた。

 竜之介は橋本を無視して足早に駐車場へと向かう。
 
 愛車の傍まで近づいて、はたと立ち止まった。

――チーフはボクの車を知ってるんだった、、、 乗ってしまえばボクだって認めた事になってしまう、、、

「どうした、竜之介?! お前の車はそれだろ?!」

「だっ、誰かと、、、 ひ、人間違いされているんじゃないですか?!」

「ひゅ~~っ! 声まで女じゃん! 凄いもんだな、竜之介」

 迫ってくる橋本に後ずさりするが直ぐに愛車のドアに追い詰められてしまった。

「な、何するんですか、、、 ひ、人違いです、、、」

「竜。 もう、とぼけなくていいから」

 橋本の自信を持った物言いに竜之介は観念した。

「あぁぁ、、、 どうしてボクだと、、、」

「ふふっ。 明菜に言われてさ。 暫くお前を見張ってたんだ」

「えっ?! あ、明菜に?」

「ああ。 彼女、お前に振られたのが余程悔しかったんだろうなあ。 一度お前のマンションに入っていく女を見かけたらしくて、お前の次の女ってどんな奴なのか突き止めてってうるさくってさあ」

――ボクの事を言ってるのか、それとも恵理の事なのか、、、 明菜、、、 チーフはどこまで知ってるんだろ、、、

「そしたら、、、お前のこんな趣味に突き当たったってことさ」

「、、、、、、」

「見たんだよ、先週の日曜日」

「えっ、、、」

「○◇山上公園の駐車場での露出プレイには驚いたぜ。 暗闇の中でヘッドライトに浮かび上がった裸の女がお前だなんて暫くは信じられなかった。 赤いハイヒールが今でも目に浮かぶぜ」

――うそだっ、、、 見られていた、、、

「あの女が新しい彼女なんだろ?! あっ?! お前の方があの女の彼女か?! あははっ。 レズビアンみたく見えるし、SMのようでもあるし、訳がわからん関係だな、おまえら」

「いやっ! やめてください、チーフ」

 橋本が不意にスカートをめくり上げて竜之介の下半身を露わにした。

「えっ、、、 どういうことだ、竜之介、、、 公園では夜だし遠くてよくわかんなかったが、、、 お前、性転換してたのか?」

 あるはずの膨らみがなくのっぺりとしたショーツのシルエットを見て橋本が驚いて大きな声を上げた。

「ち、違います、、、」

「違うったって、、、 どこにお前のチ×コがあるんだよ? ちょっと見せてみろ」

「あっ! やめてください! いやあぁぁぁぁ」

 玩具を扱うようにクルリと反転させられた身体を車に押しつけられ、ピッチリとショーツが張りついたヒップが橋本の目に露わになった。

 そして一気にショーツが引き下ろされてしまう。

「あはははっ! なるほど~~。 こうなってるのか! チ×ポを股の下で折り曲げてるんだなっ」

 タックの合わせ目からちょこんと飛び出ているペ×スの先端を橋本に見咎められてしまった。

「ああぁぁぁ、、、 止めてください、チーフ、、、見ないで、、、」

「あの女にこんな風にさせられてるのか? 会社にも毎日こんなふうにチ×ポを隠して出勤してんだろ?!」
     
「い、いえ、、、 そんなことは、、、」

「ウソつけ! 最近、トイレはいつもおっきい方に入ってたの知ってるぜ。 こんなんじゃ小便は後ろにしか飛ばんから小便器には無理だよなあ、竜之介。 あ~~はっはっ」

「あぁぁぁ、、、やめてください、チーフ。 ひっ、人がきます」

「うるさい! じっとしてろよ、竜之介」

 橋本は顔を近づけ身体中を舐めまわす様に観察する。 そして愛撫をするようにヒップを撫でまわしていく。

 怖気立つ感触の中に疼くような甘い感覚が湧きあがってくるのを竜之介は懸命にこらえた。

「おまえ、肌も女みたいにツルツルで気持ちいいなあ」

「あぁぁ、、、 もう赦してください、、、」

「おい、竜之介! さっきの女の声で喋れよ。 この恰好で男の声は似合わないぜ」

 橋本は執拗に撫で廻し、大腿に唇を這わせ始めた。

「な、何をするんですか! やめてください!」

「こらっ! 女の声で喋ろって言ったろ!?」

 竜之介のヒップに橋本の大きな掌が振り下ろされ、パンッ!と乾いた音が鳴った。

「くくっ。 俺は男には興味がないが、お前を見てると変な気分になっちまうぜ」

「あああぁぁぁ」

「なあ、竜之介。 お前、女になりたいのか?! 性同一障害ってやつなのか?!」

「ちっ、違います、、、」

 竜之介は女の声を絞り出して言った。

「嘘つけ! くくくっ。  いい声だ、竜之介」

「ほ、本当です。 女装は休みの日だけの趣味なんです、、、」

「ふ~ん。 まあ、そういうことにしておいてやる。 今度、お前の綺麗でドSの彼女に会わせてくれよ~」

「そっ、そんなこと、、、彼女にはなんの関係もない、、、」

「ふふっ。 お前の心配はわかってるさ。 竜之介は俺の可愛い優秀な後輩さ。 このことは会社にも明菜にも黙っててやるよ。 俺とお前の秘密だ」

「ああぁぁぁ、、、 はい」

 この時、竜之介のバッグの中で携帯の着信を示すメロディが鳴った。

「ん?! 彼女からじゃないのか?! 出ろよ」

 一瞬、焦った表情を見せた竜之介に橋本は聞いた。

「あっ、、、 いいです。 後で掛けなおします」

 困ったような表情を浮かべた竜之介を怪しく思った橋本がバッグから携帯を取り出した。

 掛かってきた電話は既に留守電に切り替わっていて橋本は直ぐにスピーカーにして再生ボタンを押した。

(JULLEY編集部の長谷川です。 みちる君、3時の約束だったんだけど何かトラブルがあったんですか? カメラマンもスタンバイしてるんだけど、連絡をください )

「みちるってお前の事か?」

「あぁ、、、 はい、、、」

「3時に約束してたのか? JULLEY編集部の長谷川って誰だ?」

「あの、、、 今日、雑誌の撮影があって、、、」

「ほう。 JULLEYって女性ファッション雑誌じゃなかったっけ?」

「はい、、、 読者モデルに応募してて、、、」

「へえ~?! お前がモデル?! 今日撮影の予定なんだな?!」

「はい、、、」

「すげ~じゃん。 行こうぜ。 まだ5分遅刻してるだけだ」

「えっ?!」

「俺も立ち会う。 その撮影にさ」

 竜之介のバッグから車のキーを取り出し、橋本は運転席に乗り込んだ。

「そんな、、、」


「さあ、早く乗れよ」

 エンジンがかかり、橋本は竜之介を急かすようにブウォーン、ブウォーンと空ぶかしを繰り返す。

「はい、、、」

 竜之介は仕方なく言われるままに助手席に乗り込んだ。

「でっ、撮影は何処だよ?」

「、、、三ツ沢公園の近くです」

「なんだ、直ぐそこじゃねえか! 急ごう」

 竜之介の愛車はタイヤをきしませ、立体駐車場を発進した。
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