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第4章 翻弄  ―補導―
2020/07/03(Fri)
「う~~ん、、、 よく寝た~」

 連夜の寝不足のせいもあり、昨夜はぐっすりと眠った。

 恵理がアメリカに出張して初めての週末だ。

 恵理が居ないと思うと寂しさがこみ上げてくるが、たった3カ月のことだと思い直し、一人で女装して外出しようと決めた。

 洗濯器を回し、部屋を手早く掃除をしてからシャワーを浴びた。

――そうだ! 今日は恵理のセーラー服でお出掛けしよっと

 思えば恵理に初めてお尻の快楽を教えられたのは恵理のセーラー服で外出した日だ。

 ウキウキしながら鏡の前に座り、メイクをはじめた。

「あ~あっ、、、肌がボロボロだあ、、、」

 竜之介は鏡に映る自分を見詰めてため息をついた。

 目の回りにはうっすらくまができて、肌がかさついている。

――ほんと、いい加減にしておかなきゃ、、、 寝不足は大敵だわ

 化粧のノリが悪く、なかなか思うようには仕上がらない。

―――こんなもんかなっ

 髪をツインテールにしてみると、幼い感じが出てそれなりに満足の出来栄えになった。

 そして手に入ったばかりの女装の新兵器、ブレストフォームを専用の接着剤で胸に張り付けた。

「うふふっ」

 接着剤が乾くのを待ち、鑑の前で身体を揺らすと、バストがフルフルと揺れる。

 鑑に映る全裸の女の子にしか見えない自分の姿を様々なポーズで堪能し、ウキウキ気分でセーラー服に着替えた。
 
「うふふっ。 今日は渋谷へ行こうかなあ」

 竜之介は立ちあがると、ネットで手に入れたばかりのスクールバッグを手にいそいそと部屋を出た。

          ◆
 一人で駅まで歩き、一人で電車に乗った。

 ずっと周りの視線が気になり、ドキドキしている。

 いつも隣に居る恵理がいない街歩きは少し不安を感じながら始まった。

 お茶を飲んだり、ブティックを覗いたり、女の子としての渋谷の街を竜之介は存分に楽しんだ。

 日が落ちた頃、空が俄かに曇りだし、電飾看板がくっきり浮かび上がる。

 渋谷の街はすっかり夜モードに変わるり、雨がポツ、ポツと振り出してきた。

――天気予報どおりだなあ、、、 そろそろ帰ろっかな

「ちょっと、貴女。 いいかしら?」

 駅に向かって歩き出すとふいに肩を叩かれ呼びとめられた。

 振り向くと制服の婦人警官が立っている。

「は、はい、、、 なんですか?」

「見なれない制服ね。 貴女、どこの高校?」

「あ、、、 あの、、、」

 すーっと血の気が引く。

――やばっ。 どうしよう、、、

「生徒手帳、見せてくれる?」

「あっ、、、 そ、そのぉ、、、 今日は持ってなくて、、、」

「ちょっと、中に入って話聞かせてくれる?!」

 声をかけられたのはちょうど交番の真ん前だった。

「あっ、その、、、 私、、、」

「何なの?」

 周りにはたくさんの人が行き来している。

――こんな場所で『実は男です』だなんて恥ずかし過ぎるよなあ、、、

「あっ、いえ、、、 わかりました」

 竜之介は婦警に抱きかかえられるように交番に入っていった。


          ◆


「ホントですってば!」

 男の声で竜之介は懸命に訴える。

「どう見ても女の子でしょ」

「だから~、、、 趣味でコスプレしてるだけですって! 声を聞けばわかるでしょ!」

「おう、どうした、並木? 家出娘か?!」

 いつの間に現れたのか、背後から背の高い目つきの鋭い男が声をかけてきた。

「あっ、お疲れ様です、富岡警部」

 目の前の婦警が直立し、その男に敬礼した。

「実は補導したこの子が、自分は大人の男で、趣味の女装だと言い張るんです」

「どれどれ、、、 はあ?!  マジか?!」

 富岡は竜之介の顔を覗き込み、そして驚きの声を上げた。

「ホントですって! ボクは男です!」
 男の地声で懸命に言った。

「ふふっ。 身元は?」

「それが持ち物をチェックしましたが、身元が分かるものは何も持ってないんです。 タツノスケという成人男子だというだけで、、、」


  並木婦警が机の上の学生カバンを見て言った。

 カバンの中にはファッション雑誌と、女の子らしいものをとプレゼントされた恵理とお揃いのグッチの財布が入っているだけで、”竜之介”を証明するものは何も入れていなかった。

「誰か然るべき人に迎えに来させればいいじゃないか。 携帯は持ってるんだろ?!」

「それが、電話しようとしないんです。 ロックが掛かってて、中も見れないですし、、、」

「ふ~ん、、、 邪魔くせ~なっ。 じゃあ、署で詳しく調べるか?」

 竜之介は思わず頭を上げ、富岡刑事を見ると冗談で言っているように見えない。

――ウソだろ、、、

「とにかく署まで連れて行こう。 こいつかも知れんな、例の奴は。 そうだったらお手柄だな、並木」

「はい!」

 並木婦警はすっくと立ちあがり、竜之介に立つように促した。

「あっ、いやっ、、、 そんな、、、」

―――なんだよ、例の奴って、、、

     

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