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第2章 新しいボク  ―JULLY― 2/2
2010/01/09(Sat)
 案内された応接室で、長谷川の面接が始まった。


「プロフィールのみちるって本名なのかな?」

「いいえ。 違います、、、」

「ふふっ。 そうですか。 まあ、みちる君でいきましょうね。 それにしても君の女装は凄いね~。 本当に可愛い女の子にしか見えないよ」

「あ、ありがとうございます、、、」

「それにさっきの声にはマジで驚いた! みちる君は男性だったはずだったのに、女の子じゃないの?!って思ってしまったよ」

「受付の方にこの声が聞こえたらやっぱり恥ずかしいので」

 受付で挨拶した時は”みちる”の声を使ったが、素性を知る長谷川の前では取り繕う必要がないので応接室に入ってからは”竜之介”の地声で喋っている。

「アハハ。 そりゃそうだ。 どう見たって女の子の君が今の声で喋ってたら変に思うよね」

「ですよね。 ウフッ」

 少し緊張がほぐれた竜之介は女声で喋った。

「うわっ! 自由自在なんだね」

「ウフフッ。 努力の賜物なんですよ」

「そうですか。 いや~、実に素晴らしい! で、本題なんですが、僕は一目見てみちる君の事が気に入りました」

「あ、ありがとうございます」

「来月号まではもうモデルは決まってるんだけど、次のシーズンの企画で君に紙面を飾って貰おうと思うんだが、いいですか?!」

「、、、はっ、はい! 喜んで」

「そうですか。 じゃあちょっと身体を見せてもらおうか。 まずは上着を脱いでくれるかな?!」


「えっ?!」

「ん?! 編集者としてはモデルの身体的特徴を知っておきたいんだよ」

「あっ、、、 はい。 そうですよね、、、」

 竜之介はジャケットを脱いだ。

「ほっほう! みちる君は骨格も華奢だね~。 ホント、女の子みたいだな」

「そっ、そうですか、、、」

 身体をじっと見られていると思うと、竜之介は恥ずかしくて顔を上げることができない。

「じゃ、Tシャツを脱いで立ってくれる?」

「えっ?! Tシャツも、、、 ですか?」

「あははっ。 何を恥ずかしがってるんだよ、みちる君。 女性のモデル達だってスタッフの前で平気で着替えするよ。 まして僕たちは男同士でしょ」

「えっ、ええ、、、 でも、、、」

 ファッションショーのモデル達はスタッフの前でも平気で裸身をさらすことは竜之介も知っている。

 しかしブラジャーを付けている姿を長谷川に見られるのは、男同士だからこそ恥ずかしい。

「僕たちはね、バストの形とか、どこに痣があるとか、モデルのパーツの特徴を把握して、雑誌に紹介したい服に一番適したモデルを選ぶんだよ。 みちる君にも似合う服で”JULLY”に登場して欲しいんだ」

「はい、、、」

――そう、、、 ボクはモデルなんだ、、、 顔や身体はただのパーツ、、、 身体は服を引き立てるための道具なんだよなあ、、、


「は、はい、、、」

 竜之介は意を決して立ち上がり、一気にTシャツを脱いだ。

「おっ、いいねえ~。 肌もとても綺麗だ。 じゃ、デニムパンツも脱いで」

――えっ、、、

「あぁぁ、、、 はい」

 長谷川の当然の事だという口調に圧され、竜之介はショートパンツも脱いでいく。

――み、見られてる、、、

 羞恥心で竜之介の身体は熱く火照ってきた。

「うおっ?! どうなってんだ?」

 思わず立ち上がった長谷川が、竜之介の女の子のような股間のシルエットを指差し驚きの声をあげ、勢い込んで竜之介の傍に寄ってきた。

「、、、ペ、ペニスを股間に挟んでるんです、、、」

「へぇ~~~! それだけで?! 見事なもんだ! よく見せてっ」

 長谷川は身体をかがめ、パンストで包まれた竜之介の下半身を舐めまわすように眺める。

「信じられんなあ! これなら身体にぴったりフィットしたパンツスタイルもいける! 水着だってOkかもね」

「あっ!」

 長谷川の手がブラジャーの背中のフックを一瞬に外したのだ。

 竜之介は無意識にまるで女の子が恥じらうように手で胸を覆った。

「あははっ。 これってヌーブラだね?! なんだかホッとしたよ。 声といい仕草といいホントは女性かも?なんて思ったりしたしてたんだ」

 竜之介は、人造の膨らみが貼りついた胸を見て長谷川がこみ上げる笑いを噛み殺しているように見えて、少し腹が立った。

「みちる君。 ちょっと腕をあげてみて」
 
 言われるままに両腕をあげ、頭の後ろで手を握る。 竜之介は恥ずかしさで顔が火照っているのが自分でもわかった。

「うん、うん。 腋もスベスベだねえ」

「ええ、、、 元々あまり生えてないんで」

「そうですか。 タンクトップ着て腋を露わにしたポーズもいけるよ」

――あぁぁぁ、、、 恥ずかしい、、、

「ありがとう。 みちる君。 もう座っていいよ」

 気がつくと長谷川は元の席に座っていた。

「あっ、はい、、、」

 長谷川の動きにすら気付かない程に竜之介は羞恥心で頭がボーっとしていた。

「じゃあ、スタッフたちに君のイメージを伝えなきゃいけないから写真を撮りましょう。 ちょっと待っててください。 スタジオの手配をしてきますから」

 1分も経たずに長谷川は応接に戻ってきて、竜之介にシフォンのドレスを手渡した。

「みちる君にプレゼントします。 来月号に掲載される春物の新作の色違いのドレスだよ」

「えっ、いいんですか?  ありがとうございます」 

「着換えてくれるかな?!」

「ここで、、、 ですか?!」

「着替えてから、またスタジオで着替えるかい?!」

「そ、そうですね、、、 わかりました、、、」

 長谷川に見つめられながらドレスを身に着けていると、身体の奥から疼くような感覚が湧きあがり、竜之介は戸惑いを覚えた。

「おっほ~! よく似合ってますよ、みちる君。 来月号の掲載モデルよりも服が引き立ってるかも知れないね」

「あぁ、、、 そんなこと、、、」

「いやホントだよ」

「あ、ありがとうございます、、、」

「さっ、スタジオへ行きましょうか」

「はい、、、」

 竜之介は、脱いだ服を急いでバッグに投げ込んだ。

          ◆
「いいよ~、みちるちゃん! とってもいい表情だ!」

 長谷川はカメラマンの浜田には竜之介の素性を伏せ、OLをしている素人モデルと紹介していた。

 ビートの効いたBGMが鳴り、煌々としたライトが全身を照らし、眩いフラッシュを浴びる。

 最初は緊張でぎこちない動きの竜之介だったが、いつのまにか浜田の軽妙なおだてに乗せられ、シャッター音の洪水に竜之介はふわふわと夢見心地だ。

 ファインダーを通してプロのカメラマンさえ女だと信じ切っているのが、何よりも竜之介の気分を高揚させた。

「サイコ~! いいよ~、みちるちゃん! そこでクルッと廻ってみて。 そう! そう! いいよっ」

――気持いい、、、 モデルって、写真を撮られるってなんて楽しいんだろ。 

「笑って! そう! いいね~! そう! その表情、いただきっ」

「はいっ、オッケ~~! 浜ちゃん、ありがと」

 長谷川がカメラマンの浜田に撮影終了を告げた。

「みちるちゃ~ん。 お疲れ様でした」

「どうも、ありがとうございました」

 撮影が終わってしまったのが残念に思うほど、竜之介には楽しい時間だった。

「長谷川。 いいねえ、みちるちゃん。 絶対売れるよ、この子」

 浜田が長谷川の肩を抱き、ヒソヒソ声で囁いた。

「ほう、そう思うか?!」

「ああ! 請け合いだ。 俺の目利きに間違いはないよ」

「あははっ。 そうか~。 大した眼力だよ、浜ちゃん。 あははっ」

「なんだよ、長谷川、、、 意味深な笑い方するじゃないか?!」

「いや、スマン、スマン。 別に意味はないよ」

「まあ、いいや。 本番の撮影も俺に任せてくれよな」

「ああ。 もちろんだよ」

 長谷川もモデルとして驚くほどのパフォーマンスを見せた”みちる”に大満足で、次々と企画が頭に浮かんでいた。

     

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