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第3章 みちる ―JULLY―
2020/07/02(Thu)
「ねえねえ、たっち~」

「なあ~に?」

「ジュリガの読者モデル、応募してみない?」
 
 恵理が竜之介が愛読しているファッション雑誌JULLYのあるページを指差して言った。

「えっ? ボクが?」

「そうよ。 みちるちゃんとして」

「恵理ったら何言い出すんだか、、、」

「本気よ」

「そんなの無理に決まってるよ、、、」

「やってみなきゃわかんないでしょ。 今のみちるならここに出てる子にだって負けてないわよ」

「そんなのばれるよ~」

「うふふっ。 違うよ、たっち。 ちゃんと男の子として応募するのよ。 女の子より綺麗なんだから結構うけると思うんだあ~」

「ええ~~、、、 そりゃまあ話題性はあるだろうけどさあ、、、」

「雑誌社だってお洋服が引立って話題性のあるインパクトがある人が欲しいのよ。 じゃあ、決まりよね!?」

「マジで?!」

「うん。 マジで~っ! うふふっ」

 恵理は嬉々として応募用紙にペンを走らせ始めた。

「写真はどれがいいかな?! 選んで、み・ち・る・ちゃん」

 恵理はデスクトップの写真フォルダを指差し、竜之介を悪戯っぽい目で見た。

「もぉ~、しょうがないなあ、、、 恵理ったら、”みちる”のこととなると、お姉さんぶっちゃうんだからなあ、、、」

 竜之介は恵理に言われて仕方なくといった風で、PCの前に座った。

「嬉し~くせに~だっ」

「うっさいっやいっ!」

「これどうかしら?!」

「う~ん、、、 こっちの方が良くない?」

 二人は写真を撮った時の事、服を買った時の事を楽しそうに話しながら次々と写真を開いていった。
「えっ?! JULLY編集部からだ、、、」
 
 夜遅くマンションに戻り、メールをチャックするといつものようにたくさんの応援メールが届いていたが、その中に差し出し人がJULLY編集部となっているメールがあった。
 
 メールを開いてみると、正式採用ではないが面接の上、カメラテストをしてみたいので、今度の日曜日に会社を訪ねて欲しいと書いてあった。
 
「どうしよう、、、」
 
 恵理に言われて仕方なく応募したが、元々採用されるはずがないと思っていたし、既に書類を送ってから1カ月近く経ち、読者モデルに応募したことすら忘れかけていた。
 
――今度の日曜日って、恵理は居ないもんなあ、、、
 
 憧れの読者モデルになれるかも知れないのは嬉しいのだが、恵理がアメリカ出張から戻ってくるのはその日の夕方の予定なので独りで行かなくてはならない。
 
 女装して外出することに慣れてきているが、その傍にはいつも恵理が居る。

 いまだに恵理以外の前で女装姿を見せたことはなかったので、不安がこみ上げてくる。

――ひとりで行くのはやだなあ、、、 

 恵理に相談のメールを送ると、直ぐさまアメリカにいる恵理から電話が掛かってきた。

――えっ?! 起きてるんだ?! 向こうは朝7時くらいのはず、、、

 恵理は弾んだ声で予想通りの答えを返してきた。
 
 その時に着ていく服はアレにしろ、コレにしろと竜之介の不安をよそに恵理は大はしゃぎで、撮影に立ち会えないことを悔やむ始末だ。

――トホホッ。 恵理に相談したのが間違いだったな、、、 しょうがない、、、

 竜之介は電話を切ってもしばらく迷っていたが、面接に行く旨のメールをJULLY編集部に返した。
 
             ◆
《面接の日曜日》

 竜之介は指定された時間にドキドキしながらJULLYを発行しているぶんかマガジン社を訪れた。

――やばっ、、、受付がある、、、 
 竜之介はゴクリと唾を飲み込み、受付に向かった。

「こんにちは、、、」

「いらっしゃいませ」

「あのぉ、、、 速水といいます。 JULLY編集部の長谷川編集次長と2時にお約束してるんですが、、、」

 竜之介はドキドキしながら”みちるの声”で受付の女性に来意を告げた。

「JULLYの長谷川ですね。 そちらにお掛けになってしばらくお待ちください」

――ばれていないよね?! 疑っていないよね?! 

 女声で他の人に話しかけるのは、恵理にけしかけられ居酒屋のオーダーをして以来だ。

 受付の女性は、いぶかる様子もなく内線電話で担当部署へ電話を繋いでいる。

 壁際の椅子に座り暫く待っているとエレベーターから出てきた長身の男が竜之介に向かって近付いてきた。

「速水さんですね?! お待たせしました。 JULLYの長谷川です」

 長谷川編集次長は、顎髭を生やした30半ばの業界人ぽい男だった。

「こ、こんにちは。 はじめまして、、、 速水です、、、」

 竜之介は立ち上がり、ペコリとお辞儀をした。

「えっ?!」

 長谷川は一瞬キョトンした表情を浮かべた。

「さあ、こちらへどうぞ」

 長谷川がエレベータに向かって歩きだした。

「あっ、はい、、、」

 竜之介は慌てて長谷川の後を追った。

         ◆

     

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