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第2章 新しいボク  ―カノジョ― 1/2
2020/07/01(Wed)
 ツーリングを約束した日曜日、案じていた雨は明け方にはあがり、空気は澄んで爽やかな朝を迎えていた。

 竜之介は一週間前に理恵と出会ったカフェ・ガレットに向かってバイクを走らせた。

 男として理恵に会うのは女装して会った時よりも一段と緊張している。 

 先週は理恵と打ち解けられたと思っていたのだが、時間が経つと女装をした生身の”たっち”を面白がっただけで、素の男の竜之介に理恵が興味を持ってくれるのか不安で仕方がない。
 
 
 店に着くと既に理恵は前に会った同じオープン席に座っていた。

「たっちさん。 おはよ~ございます」

 竜之介に気付いた理恵は大きく手を振り、柔和な笑みを浮かべて竜之介を迎える。

「おはよー」

――やっぱり、この子はいいなあ、、、

 ”みちる”として会話した時も楽しかったが、竜之介のあだ名、”たっち”と呼ばれたことも新鮮で嬉しかった。

 理恵の笑顔は一瞬にして竜之介の緊張を溶かし、先週居酒屋で別れた時の二人の空気感に戻ったように思う。

「たっちさん。 朝ご飯食べたの?」

「ううん」

「ここのモーニング、とっても美味しいですよ。 一緒に食べましょ」

「うん」
 
 普段は朝食を食べない竜之介だが、理恵の心地よいリズムに乗せられ、久しぶりに朝食を口にすることにした。

「どうですか?! 口に合います?」

「うん。 旨い」

 初めて口にする食べ物だが屋号に謳っているだけあって、クレープに似た生地にハムや卵が包まれたガレットはとても美味しい。

――ふふっ。 美味しいのは理恵が目の前にいるからかもね

 竜之介は心の中でにやつきながら、ガレットにかぶりついた。

          ◆
「どうぞ。 散らかってるけど、、、」

「おじゃましま~す」

 富士五湖までツーリングを楽しんだ竜之介と理恵は、竜之介の部屋で夕食に鍋を囲もうと食材を買いこんで戻ってきた。

「きゃ~~っ! 女の子の部屋みた~いっ!」

 理恵はベッドの上で子供のように身体を弾ませながら、竜之介の部屋を見まわした、

「この前も言ったけど、元カノと別れてからは、女装グッズを隠す必要なくなったからね」

「そっかあ~。 でも、男のお友達とか来たりしたら困らないの?」

「う~ん、、、 部屋に友達を呼ぶことってないなあ。 あっ、一度、先輩が酔っぱらっていきなり来た時は慌てちゃったけどね」

「今日話してたプロレス好きの先輩ねっ?! うふふっ。 ばれなかったの?」

「うん。 居留守。 いるのは分かってんだぞ~ってドアをドンドン叩くのをひたすら耐えて声を殺してた、、、」

「え~~っ。 それで諦めてくれたの?」

「うん。 お隣さんがうるせ~ぞって顔を出したら直ぐにスンマセンって帰っていった」

「あははっ。 可哀想。 会社で文句言われたでしょう?」

「まあね。 先輩すげー酔ってたし、ヘッドホンで音楽を聴いてたことにしたら納得してたような、、、 あはっ」

「そうなんだ。 さあて、お腹すいちゃったね~。 直ぐに用意するからたっちはお風呂入れば?! 身体、冷えてるでしょ」」

「う、うん」

 理恵は買い物袋を手に台所に向かった。

          ◆

 二人で鍋をつつきながら、今日のツーリングでの出来事や、学生の頃の思い出話を語らい、とても楽しい時間を過ごした。 
 
「ふ~っ、、、 お腹、いっぱい、、、 美味しかったね~~~っ、たっち。 ごちそうさまでした」

「うん。 美味しかったっ。 理恵がこんなに料理が上手だとは驚きさ。 ごちそうさま」

「あ~~っ! お鍋だから材料を切って煮るだけだもん、誰が作っても同じだよ。 たっちお勧めのあのポン酢だったから美味しかったのよ!」

「そうそう! あの旭ポン酢の味を知ったらもう他のは食えなくなっちゃうだろ?!」

「そうかも! 今日のお返しにお家にお招きしてご馳走してあげたいけど、隣の部屋に上司が住んでいるからちょっとねえ。 また今度、ここで得意なのを作ってあげるね」

 理恵は直ぐ近くの会社の借り上げマンションに住んでいた。 
 
「「うん。 楽しみにしてる」

「あっ、、、 もうこんな時間だわ。 大急ぎで片づけて帰らなくっちゃ」

「えっ、、、 もう帰っちゃうの、、、 まだ10時だよ」

「帰っちゃうのって、、、 あ、明日、仕事だし、、、」

 じっと見つめる竜之介の瞳を見ると、何を欲しているのか理恵にはわかる。

「だって、、、 出会ったばかりだし、、、 あの、、、 あっ、、、 ダメッ、、、」

 竜之介は、理恵を抱き寄せ、唇を重ねた。 

 
――柔らかい唇だ、、、 

 竜之介は理恵の華奢な体を抱きしめ、強引に唇を奪った自分らしくない行動に我ながら驚いてしまった。

「あぁぁぁ、、、 たっち、、、 好きっ」

「理恵。 ボクもさ」

 竜之介は理恵の身体を抱きかかえ、ベッドの上にそっと下ろした。

          ◆


     

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