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第2章 新しいボク  ―恵理― 1/2
2020/07/01(Wed)
――まだかなあ、、、

 竜之介は、指定されたカフェ・ガレットのオープンテラスの席にいる。

 ホリグチ リエとの約束だった5時を10分程過ぎていた。

「うぅ、、、寒っ、、、」

 一瞬、少し強い風が吹き抜け、竜之介は思わず首をすくめ、タートルネックに首をうずめる。


 冬にしては日中は異様に暖かい日だったのだが、約束の夕方近くになるとさすがに冷え込んできた。

 暖かい店内にも空席はあったのだが、リエと会話を交わすことを考えると、四方の隣り合った客に声を聞かれるのは恐ろしいので、空席だらけのオープンテラスを選んでホリグチ リエを待っていた。

『お会いする時に迷わないようにブログの中の女の子で来てくださいね』というリエのリクエストに従い、濃いめのメイクを施し、身体の線が出にくいざっくりとしたニットのワンピースを身につけていた。

――あっ、、、 見てる、、、

 カフェに入ってきた若い男が竜之介をじっと見ているのに気がついた。

 ヒップホップ系のファッションを身をつけた軽薄な感じのする男だ。

――ば、ばれたのかなあ、、、

 その男は、笑みを浮かべ竜之介の方へ近づいてくる。

――ボクの方へ来てる?! どうしよう、、、

 竜之介はうつむき、不安でドキドキしてきた。

「たっちさん?」

 その時、竜之介の後ろからブログ上のニックネームを呼ぶ涼やかな声が聞こえた。

「は、はい、、、」

 振り返るとボブカットの上品な若い女性が立っていた。

――綺麗な人だ、、、

「はじめまして。 堀口 理恵です」

「こんにちは、、、 速水、あっ、、、 たっちです、、、」

 竜之介は声を潜めて挨拶を交わした。

「遅くなってごめんなさい」

 理恵は竜之介の向かいの席に座った。

「今の人、たっちさんをナンパしようとしてたみたいですね」

 理恵の視線の先には、店の中にスゴスゴと入っていく男の後姿が見えた。

「たっちさん。 お会いできてとても嬉しいです」

「ど、どうも、、、」

 女装して人と話すのは初めてで、竜之介はどう接していいのかわからない。

「ビックリ! 声まで女の子! ホント、たっちさん、綺麗! どこからどう見ても女の子にしか見えないわ」

「…………」

「はい、コレ。 勝手に中身を見ちゃってごめんなさい」

 理恵がテーブルにメモリスティックを置いた。

「あっ、はい、、、」

「データのコピーなんてしてませんから安心してください」

「あっ、、、 そう、、、」

「メモリを拾ってからあなたのブログ、毎日見てました。 昨夜も更新されてましたね。 ほんとに可愛いわ、たっちさん。 うふふっ」

「、、、あっ、ありがとう、、、」

「ブログに書いてある通りだと、女の子になってお出掛けは今日で2度目なんですよね?!」

「、、、うん」

「うふふっ。 ドキドキしてますか?」

「う、うん。 少し、、、」

「ねえ、ねえ、聞いていいかしら?!」

「えっ、、、 何をですか、、、」

「あのー、、、 うふっ。 今日もあなたの股間は、、、、 写真のようになってるんですか?」

「えっ、、、」

 いきなり恥ずかしい核心に触れられ竜之介はドギマギしてしまった。

――そうなんだよなあ、、、 この人はあの写真を見てるんだ、、、

「そうなんでしょ?!」

「うっ、、、  うん、、、」

 悪戯っぽい無邪気な理恵の微笑みに引き込まれ、竜之介はうなずいてしまった。

「最初見た時、どうなってるんだろうってビックリしちゃいました!」

「あぁっ、、、 で、でもワタシはは女の子の恰好をしたいだけで、女になりたいわけじゃないんです、、、」

 理恵に対して言い訳口調になっている自分が何とももどかしい。

「ええ、ブログで知ってます。 うふふっ」

「そうだ! ここは寒いし、お近づきの印にお食事に行きましょっか?! 勝手にデータをみちゃったお詫びに私にご馳走させてください」

「えっ?! いやっ、いいよ、、、」

 竜之介は、データを取り返したからには一刻も早くこの場を去りたかった。

「そんなこと言わずに~。 ねっ。 いいでしょ?! 付き合ってください」

「うーーん、、、 う、うん、、、」

 秘密を知られている弱みで、イヤとは言えずつい承知してしまった。

「わぁ、嬉しい! 何がいいですか?」

「いやあ、、、 別に何でも、、、」

「じゃあ、私に任せてくださいね。 あっ、でもまだ時間的には早いですよね。 そうだわ。 一緒にお買い物に行きましょう。 今日はホントはお買い物に行く予定だったんでしょ?!」

「えっ、、、」

「たっちさん、下着が欲しかったんでしょ?! 私が一緒に選んであげる。 ねっ、いいでしょ?!」

 理恵が耳元で囁いた。

「うん、、、」

 竜之介はすっかり理恵のペースに引き込まれ、頷いてしまった。

「さっ、行きましょ」

 レシートを手に取り、さっさと席を立ってレジに向かう理恵の後を竜之介は追った。

          ◆

     

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