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第2章 新しいボク  ―ネットカフェ― 2/2
2009/12/05(Sat)
「ふぅ~、、、」

 指定された74番のチェアに深々と身体を預け、竜之介は大きく息を吐いく。 動悸は少し収まってきたようだ。 

――ばれてなかったよね、、、

 竜之介は店に入り、座席票を受け取るまでの店員の様子を思い返してみる。

 初めて竜之介を見た時も、カードを差し出した時も、利用コースを選んだ時も向けられた視線に不自然な感じはしなかったように思う。

――うん! 大丈夫。 店員さん、少しも変に思ってなかった! そうさっ。 ボクは喋んなきゃちゃんと女の子に見えるはずさっ

 思えば女装した姿で初めて人前に出るのに、受付という関門のあるネットカフェは相応しくはない。

――よく思い切ってここへ入れたもんだ。 ふふっ。

 竜之介は彷徨った幾つものショッピングセンターの駐車場で車から出ることさえ出来ない不甲斐ない自分を腹だたしく思っていた。

 諦めて家に向かって車を走らせている時に目にしたのが明菜と来たことがあるこのネットカフェだ。

 初めてこの店に来た時二人して会員カードを作り、そのカードを竜之介が持ったままだったことを思い出す。

 明菜に成りすませば、受付は通り抜けられる!と閃き、Uターンしてネットカフェに車を乗り入れた。

 予定外の思いつきの行動で、自分に苛立っていたからなのだろう、車のドアを開け躊躇せずに一目散に店の入口に向かったのがよかったのだろう。

 あんなに近くで接した店員にさえ見抜かれなかったことがとても嬉しく、今となってはショッピングセンターで買い物が出来なかったことが悔しく思えてきた。

――もう、ショッピングセンターは閉まってる時間だしなあ、、、 そうだ! せめてもこの中を歩いてみようっと

 竜之介は、フリードリンクを取りにいったり、読む気もないマンガを探すフリをして何列にも並んだ書架の間を歩く。
 
 幾度か他の客とすれ違った時、鼓動が聞こえるんじゃないかと思うほど心臓が高鳴った。

 少し芽生えた自信は、竜之介を本を探している若い女性の傍に自ら近づけ!と冒険を命じる。

 女性の左肩に右肩が触れたた時、彼女が振り向き、竜之介と目が合った。

 会釈する彼女に竜之介はペコリと会釈を返した。

――きっ、気持いい、、、

 たったこれだけのことに竜之介は身ぶるいするほどに興奮し、”女の子の姿”で”街の中に溶け込む快感を感じてしまった。

 調子に乗ると失敗するぞ!と自戒の言葉が頭に浮かび、ブースに戻って今日掲載するつもりのブログの記事を書いたりもしたが、覚えたばかりの快感は抑えきれず直ぐにブースを出たくなってしまう。
 
 入口近くの雑誌コーナーや、仕切りのないオープンコーナーを何度も歩いた。

 自分が創った”可愛い女の子”を人目にさらすことを愉しみ、所定の3時間はあっという間に過ぎていった。


        ◆

     

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