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第2章 新しいボク  ―ネットカフェ― 2/2
2020/07/01(Wed)
「ふぅ~、、、」

 指定された74番のチェアに深々と身体を預け、竜之介は大きく息を吐いく。

 動悸は少し収まってきたようだ。

――ばれてなかったよね、、、

 竜之介は店に入り、座席票を受け取るまでの店員の様子を思い返してみる。

 初めて竜之介を見た時も、カードを差し出した時も、利用コースを選んだ時も向けられた視線に不自然な感じはしなかったように思う。

――うん! 大丈夫。 店員さん、少しも変に思ってなかったみたい、、、 そうさっ。 ボクは喋んなきゃちゃんと女の子に見えるはずさっ

 あんなに近くで接した店員にさえ見抜かれなかったことがとても嬉しかった。

――よく思い切ってここへ入れたもんだ。 ふふっ。

 今となってはショッピングセンターで買い物が出来なかったことが悔しく思えてきた。

――もう、ショッピングセンターは閉まってる時間だしなあ、、、 そうだ! せめてもこの中を歩いてみようっと

 竜之介は、フリードリンクを取りにいったり、読む気もないマンガを探すフリをして何列にも並んだ書架の間を歩く。
 
 幾度か他の客とすれ違った時、鼓動が聞こえるんじゃないかと思うほど心臓が高鳴った。

 少し芽生えた自信は、竜之介を本を探している若い女性の傍に自ら近づけ!と冒険を命じる。

 女性の左肩に右肩が触れたた時、彼女が振り向き、竜之介と目が合った。

 会釈する彼女に竜之介はペコリと会釈を返した。

――きっ、気持いい、、、

 たったこれだけのことに竜之介は身ぶるいするほどに興奮し、”女の子の姿”で”街の中に溶け込む快感を感じてしまった。

 調子に乗ると失敗するぞ!と自戒の言葉が頭に浮かび、ブースに戻って今日掲載するつもりのブログの記事を書いたりもしたが、覚えたばかりの快感は抑えきれず直ぐにブースを出たくなってしまう。
 
 入口近くの雑誌コーナーや、仕切りのないオープンコーナーを何度も歩いた。

 自分が創った”可愛い女の子”を人目にさらすことを愉しみ、所定の3時間はあっという間に過ぎていった。


        ◆

※記載漏れ・追記

「あれ?! これ、忘れ物だわ、、、」

 堀口 理恵は、パソコンのメモリスティックが点滅しているのが目に入った。

 月に1、2回、息抜きに自宅マンションに近いこのネットカフェを利用している。

 理恵は、アメリカ留学のキャリアをかわれ、春から外資系の日本法人の役員秘書として働いている24歳の独身OLだ。


 リクライニングシートに横たわり、何も考えずマンガ本を読むのがお気に入りの時間になっている。

 何冊か読み終えた後、お店の蔵書検索をしようとパソコンに電源を入れた時、USBポートに挿したままになっているメモリスティックに気付いた。

――前のお客さんのだわ、、、

 すぐにお店のスタッフに渡そうと思ったが、何が入ってるのだろうと好奇心が湧きファイルを開いてみた。

 たくさんのフォルダがあり、サムネイルを見るとたくさんの画像ファイルが入っているようだ。

――見ちゃいけないのはわかってるけど、、、

 しかし他人のモノを覗き見するのは蜜の味だ。

 躊躇いながらもサムネイルをクリックした。

――あらっ、可愛い

 色々なファッションに身を包んだ可愛い女の子の、鏡に映したセルフ撮影らしい写真がたくさん入っていた。

 次々と画像を見ていると、身につけるファッションはもちろん、色々な化粧法やウィッグなどを駆使してイメージや表情がコロコロ変わるこの女性に惹きつけられてしまっていた。

――ファッションブログの素材なのかなあ?! あっ! この服、素敵!

「あらまっ?!」

 最後のフォルダを開くと、女の子の全裸の写真があったのだ。

 一瞬、見てはいけないモノを目にしてしまったようでドキッとしたが、他人の秘密の核心を前にして誘惑には抗えない。

 しかし、画像をよく見てみるとノーメイクで微笑む彼女には、陰毛の陰りがなかった。
     
――パイパン?! 剃ってるのかしら、、、 それにこのバストは、、、

 バストの膨らみもまったくないのに気付いた。

「これって、、、 さっきまでと同じ女の子なの、、、」

――こんなに可愛いのに、、、 きっとコンプレックス持ってるんだろうなあ、、、

「えっ?! ち、違うわ、、、 」

 次に開いた画像には、にこやかに微笑む彼女の股間にペ○スがぶら下がっているのだ。

「おっ、男の子だわ!」

――うそっ!? 信じられない、、、

 よく画像を見返してみても、ペ○スさえなければどうしても女の子にしか見えない。

「男の子だったんだあ、、、」

――このスティック、どうしましょう、、、 この子、こんなの見られたって知ったら恥ずかしいだろうなあ、、、

 他人の秘密を覗いてしまった罪悪感で理恵はドキドキしているのだが、このスティックの処理を考えると困ってしまった。

 カフェのスタッフに渡したとしても、彼らだってこのファイルを見るはずで、この子の秘密を知る人間が増えるだけだ。

――このまま知らないふりしてるほうがいいのかしら、、、 でもこんなの、知らない人が持ってると思ったらこの子、ずっと不安だろうなあ、、、

 理恵はメモリースティックの処理の仕方をあれこれ思い浮かべながら残りの画像を次々とクリックしていった。

「ふぅ~、、、」

――どこの誰なんだろう、、、 会ってみたいなあ、、、

 試しに画像ファイル名でブラウザの画像検索をかけてみた。

「あっ!」

 一発でそのサイトに突き当たった。
            
――『女装外出日記 ヴィーナス&マース』ですって、、、 やっぱり、、、

 ブログの記事を次々開いてみると、確かに今まで見ていた画像がサイトの中にあふれていた。


     

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