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第2章 新しいボク  ―ネットカフェ― 1/2
2020/07/01(Wed)
「プッハァ~~! 旨いっ!」

  日曜日の深夜、竜之介はバスルームを出てから、缶ビールを一気に飲み干した。

 初めて女装外出ができた達成感でかなり高揚している。

 胡坐をかく股間に一週間ぶりに解き放ったペ○スが乗っかるように納まっているのを目にすると、ホッとした気持ちに包まれていた。

 この2カ月の間、竜之介は家にいる間は必ず女性用の衣服を身につけ、女装して外出する時に備えて女性らしい所作で動けるように努めている。

 化粧やファッションはもちろんのこと、自分の姿をどこまで女の子らしく近づけられるかを追求するために、テレビの女性タレントの動作や、会社の同僚や街ゆく女性の仕草を観察し、女の子らしい身のこなし方を研究していた。

 歩き方や仕草は男女の違いは明らかで、研究していても面白ささえ感じるようになり夢中になっていた。

 女性は腕を振らず、つま先を少し内向きに両足の膝がこすり合わされるようにして歩くのだ。

 ヒールを履き、フローリングの上を行ったり来たり歩く練習していて、隣の部屋からうるさいぞ!とばかりに壁をドンドンと叩かれたこともあった。

 女装した時に人に話しかけられた時の事を思い、最近は、トレーニングキットを購入して女の子の声を出すボイストレーニングまで始めていた。

 元々、男にしては高い声質なのだが、レコーダーに録って聞いてみるとまだまだ人と会話出来るレベルには達していないのだが、いくつかの単語は自分で聞いても『おっ!?』と思えるような声が出せるようになっていた。

 ただ、ひとしきり”女性”を楽しんだ後で化粧を落とし、肌の手入れをしていると楽しいのだが、酔って帰宅しそのままベッドに潜り込みたい時には、煩わしく女の子の大変さが竜之介には身に染みた。

「やっぱり、男のほうが楽だな。 ふふっ」

 しかし、その追求をやめる気はさらさらなく、いつものように股間の整形を施し、女の子らしい部屋着に着かえてパソコンに向かった。

――おっ?! ずいぶんコメントが入ってる!

 金曜の夜、勢い込んで車で遠くのコンビニまで出かけたものの結局車から出ることが出来ず、ほとんど車の通らない県道沿いの自販機の前で写真を撮るのが精いっぱいだった。

 その写真をブログにアップしていたのだが、『初外出、おめでとう』の言葉がたくさん寄せられている。



 それでも人前に出られなかったことには変わりはなく、怖気づいてしまった自分を竜之介は情けなく思っていた。

 一夜明け、昨夜のリベンジにと、朝からバッチリとメイクをきめて、通販でしか買えなかった洋服や下着を自分で選びながら買ってみようと郊外のショッピングセンターへ車で外出した。

 しかし、いくつかのショッピングセンターをうろついたものの、たくさんの買い物客を目にすると、怖くて駐車場に停めた車から出ることが出来ず、不甲斐ない自分を腹だたしかった。

 諦めて家に向かって車を走らせている時に目にしたのが明菜と来たことがあるネットカフェだ。

 初めてこの店に来た時二人して会員カードを作り、そのカードを竜之介が持ったままだったことを思い出す。

 明菜に成りすませば、受付は通り抜けられる!と閃き、Uターンしてネットカフェに車を乗り入れた。

 予定外の思いつきの行動だからこそ思いきれたのか、車のドアを開け一目散に店の入口に向かった。

 ネットカフェでの最大の難関、受付でのシーンを思い出しただけでまたドキドキしてきているのが竜之介には可笑しかった。

 当初の目的の買い物はできなかったが、竜之介は今日の成果にそれなりに満足していた。

           ◆

「いらっしゃいませ~」

 竜之介はネットカフェ・プレシオの受付カウンターに明菜の会員カードを差し出した。

「お席はどうしますか?」

 若いアルバイトらしい男性スタッフがサービスメニューを差し出して竜之介の顔を見た。

――みっ、見てる、、、 ばれてない?、、、

 竜之介の心臓は、息苦しくなるほどに激しく鼓動を刻み、座席表を指し示す指は小刻みに震えていた。

 思えば女装した姿で初めて人前に出るのに、受付という関門のあるネットカフェは相応しくはなかったかもしれないと少し後悔をしている。

「はい。 リクライニングシート席の3時間コースですね」

 コクリとうなずく竜之介を一瞥し、スタッフは手慣れた仕草でキーボードを操作し、印字された座席票を挟んだバインダーを竜之介に手渡した。

「74番のお席へどうぞ」

 竜之介は、バインダーをつかみ、そそくさとカウンターを離れ、照度が落とされた薄暗い廊下を通って席に向かった。


           ◆
     
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