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第1章 目覚め ―接着剤タック―
2009/11/30(Mon)
「おい、竜之介。 まだ終わんないのか?!」

 金曜日の夜、デジタルシステムワークスの開発室で竜之介は残業していた。

「ええ、、、もう少しでキリのいいところなんで、、、 うっくっ、、、」

 上司の橋本チーフがいつものようにプロレス技で背後から首をはがい絞めにしながら竜之介に声をかけた。

「そんなの来週にして、久しぶりに一杯、行こーぜっ」

「うっく、、、 えっ、、、いやあ、今夜はちょっと、、、 うっ! ケホッ、ケホッ、、、」

 喉に食い込む橋本の腕の力がようやく弛んだ。

「なんだよ。 最近付き合いが悪ぃ~なあ。 おまえ、総務の明菜ちゃんとは別れたんだろう?! もう新しい女でも出来たんじゃねえのか、こんにゃろっ!?」

「いっ、いえ。 そんなんじゃないですよ、チーフ。 今日はちょっと茅ケ崎の実家に寄らなきゃいけないんで、、、」

「え~~っ?! まあ、いいや。 そういうことしておいてやるわ。 じゃ、先に帰るぞ。 素敵な終末を」

「あっ、ホントですってばあ~」

 橋本は竜之介の言い訳を信じていない様子で意味ありげにウィンクを残し、手を振りながらオフィスを出て行った。

「お疲れ様でした~、、、」

――ばれてないよね?!

 確かに実家に帰るというのはウソだったが、竜之介が案じたのはそんなことではなかった。

           ◆

 橋本は竜之介の直属の上司で、入社以来、竜之介をなにかと弟分のように可愛がってくれていた。

 何かといえば大学のプロレス研仕込みの手荒なプロレス技を仕掛けてくるのには閉口するのだが、竜之介が信頼する先輩だ。 

 しかし夏季休暇を終えてから、仕事場へも毎日のように股間をタックで形成し、女性用下着をつけて通勤するようになっている竜之介は、橋本に抱きつかれるたびにばれないか?!とドキドキしてしまう。

 出来るだけ上着に響かないようなノンワイヤーの薄い生地のものを選んでいるが、ブラジャーを着けているなんてばれたらと思うと恐ろしくて仕方がない。 しかしそのドキドキがたまらなく魅惑的なのだ。

 仕事に集中している時は忘れているが、ふとした時に可愛いランジェリーを身に付けていることを自覚すると、恥ずかしくて、そして幸せな気分に包まれる。

 そうなったきっかけは、接着剤タックの試すために通販で買った皮膚用接着剤を購入してからだ。

 医療用接着剤の威力は竜之介の想像以上に強力で、その仕上がりはとても満足する出来栄えだ。

 シャワーを浴びても股間の皮膚をぴったりとくっつけたままで”女の子の股間”を保ってくれるのだ。

 接着力を増すために陰毛をすべて剃り落としていた股間は、童女のような1本の縦筋があるだけになる。

 しかもショーツを穿き、布地の上からなぞる割れ目の感触は女性器のそれとよく似ていて、竜之介は感動すら覚えてしまった。

 週末に女装を楽しんだ後、リムーバーで剥がし綺麗な股間が崩れてしまうのが惜しくてしかたがなかった竜之介は、どれぐらい保つのかお盆休暇に試してみた。

 すると1週間経っても見事に接着したままで、リムーバーで剥がしてみると皮膚は伸びかけた陰毛のせいか少しかぶれた程度だった。

 接着剤が高額なこともあって、”週末だけの女装ごっこ”と決めていた竜之介だったが、お盆休みが終わってからは、股間のタックを解くのは金曜日の夜、仕事から帰ってシャワーを浴びる時だけで、バスルームを出ると直ぐに女の子の股間に戻る日々が始まる。

 出勤前に”女の股間”に男物のトランクスを穿いた時にいつも感じていた違和感から、女性物の下着を着けて出勤するようになるには時間はかからなかった。 

         ◆
 高校生の頃からバイクが趣味だった竜之介は天気のいい日は、バイクで通勤している。 秋の夜の冷たい風が肌に心地よい。

 今夜は、女装したまま外出してやろうと竜之介は決心していた。

 オフィスを出て家路に向かうバイクを駆っていても、何を着ようか?どこの店に行こうか?と考えていると、ドキドキして楽しくて仕方がない。

 『女装外出日記 ヴィーナス&マース』のファンとのやりとりの中で、今週末に女装してお出掛けするよと約束してしまっている。

 竜之介自身も部屋で鏡に映す女装に飽き足らなくなってきていたので、思いきって女装外出のいいきっかけだと思っていた。

 少し前に一度だけ、遠く離れた小さな公園を深夜に一周したことがあった。 当然、誰とも出会うことはなかったのだが、それでも胸の高鳴りは驚くほどで、ほんの数分の出来事がとても長く感じた。

 ばれるのは怖いけれど、とにかく美しく変身した女の子になった自分を誰かに見て欲しいという欲求がどうしようもなく高まってきているのだ。

 サイトに掲載した写真に対する書き込みも『そこらにいる女の子より何倍も可愛い』『とても男には見えない!』『街で出会ったら絶対ナンパする!』など褒める言葉がたくさん寄せられ、自分でも化粧の仕方や女の子らしい仕草などは随分上達したとかなり自信が出てきている。

――ばれたら、ばれたで仕方ないよっ。 だってボクは男の子だもん

 マンションに着いた竜之介はバイクを駐輪場に停め、小走りに部屋に向かった。


     

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2009/12/02 00:27  | | #[ 編集] ▲ top
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