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第4章 翻弄  ―ゲイバー・アモール―
2010/05/21(Fri)
 長谷川に連れられて行ったのは、猥雑な感じがする雑居ビルの中にあるアモールという店だった。

 店に足を踏み入れた瞬間、竜之介は思わず声をあげてしまった。

 屈強な体躯に真っ赤な皮のコートをまとった見るからにオカマ然とした男性がにこやかに出迎えてくれた。

 不安そうな表情を浮かべ後ろに居る長谷川を振り返ると、長谷川は悪戯っぽい笑みを浮かべて耳元で囁く。

「ここ、有名なオカマバーなんだよ。 この店で男の子ってばれなかったら完璧だよ、みちるさん。 チャレンジしてごらん」

「えっ?! そんなぁ、、、 絶対無理ですよぉ~」

 長谷川の意図は分ったが、その道のプロの目を欺けるなんて竜之介にはとても自信がない。

「ママ~。 この子、うちの雑誌のモデルのみちるさん。 一押しの子なんだ。 可愛いだろ?!」

「いらっしゃい。 みちるちゃん、可愛いわ~~ ワタシは怜奈よっ。 この途、25年! ごひいきに~っ」

「ど、どうも はじめまして、、、 みちるです。 よろしくお願いします」

 想像とおりのだみ声に竜之介は笑いをこらえて挨拶をした。

――ばれたらばれたでいいやっ。 今夜が最後だもん。 ふふっ

 竜之介は女の子・みちるとして過ごす今夜を精一杯楽しんでやろうと決めた。

「こちらこそっ! さあ、座ってくださいな」

        ◆

「ふぁ~、ふぁっ、ふぁっ、、、 あっ、ごめんなさい、、、」

「どうしたんだい、みちる君。 あくびばっかりして~。 眠くなっちゃった?! お酒、強いって言ってなかったっけ?! 撮影で疲れたのかな?!」

「あぁぁ、はい、、、 ママのカクテルが美味しくて飲みすぎちゃったかも、、、 です、、、」

――眠い、、、 なんか変、、、

「あぁぁ、、、 眠い、、、」

 竜之介はカウンターにドサリとうつ伏せに身体を預け、またたく間に眠り込んでしまった。

「ふふっ。 やっと眠ったか、、、」

 長谷川がすぅーすぅーと寝息をたてる竜之介の顔を覗きこみ、不敵な笑みを浮かべた。

「ねえ、長谷川ちゃん。 この子、うちに貰えないかしら?!」

「ふふっ。 ママ、気にいったのかい?」

「ええ、とっても」

「まだダメだよ。 で、この子に何を飲ませたのかな?」

「よく知らないけど~っ、さっき富田さんに渡された妖しげな薬よ。 なんでも犯されるにしても気持良く犯されなきゃこの子も可哀そうだろとか言ってらしたけど~。 ふふっ」

「あはっ。 あた押収品をぱくったんだなあ。 富田さんって相変わらずのドグサレ刑事だよなあ」

「何言ってんの?! その刑事さんに散々お世話になってるくせに~」

「あははっ。 確かにねっ」

 長谷川がカウンターに突っ伏す竜之介の髪の毛をわしづかみにして顔を持ち上げ、眠りを確かめるように覗きこむ。

「可愛いね~~。 姫はぐっすりおやすみだな。 じゃ、奥の部屋へ連れていくとするか」

 長谷川は怜奈ママに見せつけように軽々と竜之介の身体を抱きあげた。

「う~~ん、もぉ~~、、、 後でワタシも交ぜてくれないかしら?!」

 怜奈は大切な玩具を取り上げられた子供のように残念そうな表情を浮かべて長谷川を睨む。

「ふっ。 ザンネ~~ン! 可愛子ぶって地団太踏んでも今日はお預けだよ、ママ。 それにママが可愛子ぶってオネダリするのがありえね~し! あははっ」

「もぉ~~、随分ね~。 いけずなんだから~!」

「またいつか交ぜてやるからさっ」

「ホントよ、長谷ちゃん」

 竜之介を抱いた長谷川は店の奥の秘密の部屋に消えていった。

        ◆

     

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第4章 翻弄  ―モデル撮影― 3
2010/05/13(Thu)
何回か衣装をチェンジし、他の女性モデルと絡んだりしながらの撮影は2時間ほどで終わった。

 カメラマンに求められるまま様々なポーズで眩いストロボの光とシャッター音に包まれて写真を撮られるのは竜之介にとって夢のように楽しい時間だった。

 他の女性モデルとまったく同じように扱われ、褒めそやすカメラマンの調子のいい言葉は掛値なしに気持ちよかった。

 面接の時に感じた長谷川への不安も、前日の警察の出来事も、そして橋本にバレテしまった事もすべて忘れ去り、”オンナの子の時間”を満喫した。

――これで女装は卒業しよう。 プロの女性ファッション誌のスタッフにまったくの女性として扱われ、これほど楽しめたんだからボクの目標は達成だよね、、、

 更衣室で着替えながら竜之介はそう決めていた。 女装を初めた時のコンセプトは”ボクがどこまで女性に近づけるか”だった。

――これ以上は望むべくもない。 それに橋本チーフに知られてしまったんだからちょうどいい潮時さ。 でも暫くは会社でいびられちゃうかもなあ、、、

 明日から会社で橋本と過ごす時間を考えると気が滅入るが、元々竜之介をとても可愛がってくれていた先輩だし、まさか刑事の富岡のような悪戯を自分にしてくるとは思えない。

 そう思えたのも2度目の衣装チェンジの時、更衣室に戻ったら橋本の姿が消えていたのは、自分の女装をいたぶるのが可哀そうだと思ってくれたに違いないと直感したからだ。

――きっとすぐに前のように良い先輩・後輩の関係に戻れるはずさ、、、

 その時、ドアがノックされ長谷川が更衣室に入ってきた。

「みちるさん、着替え済んだかな~?!」

「はい」

 この後、竜之介は長谷川と食事に行くことになっていた。

「おっ?! やっぱりそれを選んだんだね。 一番似合ってたよ」

 竜之介は今日身に付けたドレスの中から水玉模様のシフォンドレスを選んで身に着けている。

「ホントに頂いていいんですか?」

  好きな物を1着プレゼントするからそれ着て食事に行こうと誘われていた。

「もちろんさ。 ギャラの代わりだし、僕も素敵なレディを連れて行って自慢したいからね。 さあ、行こうか」

「はい」

 竜之介は軽やかに立ち上がり、歩き出した長谷川の後を追った。
     


          ◆

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第4章 翻弄  ―モデル撮影― 2
2010/05/09(Sun)
「チッ! とんだ邪魔が入ったな、、、」

 今日、竜之介を弄ぶつもりでいた富岡は舌打ちをした。
          
「竜之介の男ってあいつなんかあ?! 調べてみてもそんな男の存在は浮かばなかったんだがなあ、、、」

「ちょっと、富岡さん。 見てください。 雰囲気おかしいですよ」

 長谷川が更衣室の様子が映るモニターを指差し、音声のボリュームをあげた。

「あっはっはっはぁ~」
 
 モニターを見入っていた富岡が弾けるように笑った。

「女装の秘密を知られて脅されてるってことだな。 ふふっ。 まかせとけ」

「じゃ、昨日言ってた通り今日、、、?!」

「ああ。 ドクターにも声掛けてやれよ」

「わかりました」

         ◆

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第4章 翻弄  ―モデル撮影―
2010/05/09(Sun)
「遅れてしまってすみません、、、」

 指定されたフォトスタジオに30分遅れて辿りついた。

「心配しましたよ、みちるさん。 早速始めましょう。 これに着替えてください」

 長谷川は黒地にピンクの水玉模様が鮮やかなシフォンドレスを手にして駆け寄ってきた。

「着替えはそこの部屋を使ってね。 ん?! こちらの方は?」

 竜之介の背後に立つ橋本を訝しげな表情で長谷川が尋ねた。
 
「と、友達です、、、」

「友達ってみちるさんの彼氏って事かな? ふふっ」

 長谷川は意味ありげに笑った。
 
「い、いいえ! 違います」

「ははっ。 はじめまして。 こいつの職場の同僚の橋本っていいます。 一人じゃ不安だから撮影に付き合ってくれって言うもんで。 見させて頂いていいんですよね?
!」

「う~ん、、、 他のモデルさんもいますし、その場で着替えたりすることもあるので、それはちょっとまずいなあ」

「あっ、そうなんですか、、、 残念だなあ」

「まあ、初めての撮影でみちるさんもナーバスになっておられるようだし、今から着替えてもらう間にうんと勇気づけてあげてくださいよ」

「そうですね。 そうします」

 橋本は、竜之介の肩を抱いて指定された更衣室へ向かった。


          ◆

「ほれっ、竜之介。 早く着替えなきゃカメラマンが待ってるぜ」

「橋本さん、、、 お願いですから出ていってください、、、」

「なんでだよ~。 ナーバスになってるお前を元気付けてあげてって頼まれたんだぜ。 頑張れ~、竜之介! 早く脱げよ」

「、、、あぁぁぁ」

 竜之介はワンピースの肩ひもに手をかけた。

 橋本は入社以来何かと面倒を見てくれた竜之介がもっとも信頼する先輩だ。 その橋本の前でブラジャーとショーツだけの姿を晒すのはとてつもなく恥ずかしい。

「ひゅ~~~っ! お前、身体つきまで女みたいだなあ~~! 前にサウナでお前の裸を見た時は細いなあとは思ったけど、ひょっとしてホルモン剤とかって飲んでるんじゃないのか?!」

「いっ、いいえっ! とんでもない、、、」

 あまりの羞恥にかぁーっと身体が火照り、目眩がしそうな程に血が湧きたってくる。

「やっべ~っ! お前を見てたらチ×コ勃ってきたぞ。 あははっ」

 竜之介は長谷川に渡されたドレスを手に取り、肌を隠したい一心で慌てて身に付けた。


         ◆

     


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第4章 翻弄 - パーラー - 3
2010/05/03(Mon)
「ずいぶん儲けたもんだな、竜之介~」

 景品交換の小さな窓口から差し出された6万円を超える札をみて橋本が大きな声を上げた。

 竜之介は橋本を無視して足早に駐車場へと向かう。
 
 愛車の傍まで近づいて、はたと立ち止まった。
 
――橋本チーフはボクの車を知ってるんだった、、、 乗ってしまえばボクだって認めた事になってしまう、、、

「どうした、竜之介?! お前の車はそれだろ?!」

「だっ、誰かと、、、 ひ、人間違いされているんじゃないですか?!」

「ひゅ~~っ! 声まで女じゃん! 凄いもんだな、竜之介」

 迫ってくる橋本に後ずさりするが直ぐに愛車のドアに追い詰められてしまった。
 
「あぁぁ、、、 どうしてボクだと、、、」

 竜之介は観念した。

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第4章 翻弄 - パーラー - 2
2010/05/02(Sun)
――うわぁ~い!

 慣れるまでは初めてプレイする機械に少し苦戦したが、慣れてくると面白いようにボーナスゲームを引き当て、順調にコインは増えていく。

――うふふっ。 今日の目標の5万円に届いたかな?! 

 とにかく女装にはお金が掛かる。

 各シーズンの何から何まで揃えなくてはいけないし、男の服と二人分だから大変だ。

 恵理が着なくなった物をくれたり、買ってくれたりもするが欲しい物には際限がない。

 女装を卒業すると決めているつもりでも、買いたい物が頭をよぎり、ついそれを身につけた姿を想像している自分に気付いて笑ってしまう。

――ボクってしようがないなあ、、、 いっそのこと『止めるのを止めちゃう?!』か?! あははっ

「凄いなあ、ネエチャン。 笑いが止まらんみたいやなあ」

 ボーナスゲームの派手な音楽が鳴るたびにチラチラ視線を送ってきていた隣のごつい体格のおっさんが、羨ましそうに声を掛けてきた。
 
 目が合い、竜之介は茶目っ気を出してウィンクを返してやると、おっさんは「ええのぉ~、ねえちゃん」と乱ぐい歯を剥き出しにしてニヤリと笑った。

「ついてるだけです。 うふっ」

 すこしドキドキしたが、女声で応えてやるとデレッとした顔をしておっさんは下卑た笑みを浮かべた。

 時計に目をやると、JULLEYの長谷川に指定された時間が近付いている。
 
――あ~あっ、、、 まだまだ出そうだけど、メイクを直さないといけないしなあ、、、
 
 竜之介は諦めてスタッフを呼ぶボタンを押した。
 
「ぐえっ! な、何?!」

 椅子から立ち上がろうとした瞬間、いきなり背後から誰かに羽交い絞めされ、太い腕が喉をグイグイと絞めてきた。 
 
――だ、誰?! えっ?! まさか、、、
 
「くふふっ。 随分勝ってるじゃん、竜之介~~。  飯おごってくれよ~」

――やっぱり、、、 ど、どうしよう、、、 人違いってとぼけようか、、、

 竜之介が直感した通り、羽交い絞めしているのは会社の先輩・橋本チーフだった。
 
 随分と確信をもった橋本の態度に竜之介は縮みあがり、どう対処していいのかパニックになってしまった。
 
 そこへ呼び出しボタンに反応したパーラーの店員が駆け寄ってくると首を絞める腕がスッと解かれた。
 
「お止めになるんですか?」

 竜之介はコクリと頷いて席を立ち、橋本に背を向けた。

――どうしよう、、、 どうしたらいいの、、、

 周りにも聞こえているんじゃないかと思うほど心臓が激しく鼓動を刻んでいる。

 橋本はうすら笑いを浮かべ竜之介をじっと見つめていた。
 
――ボクだって分ってるんだ、、、
 
 竜之介は積み重ねたドル箱を運ぶ店員の後を黙って付いていく。 

 その後を橋本がピタリと付いて来ているのは気配で察していた。

           ◆

     

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第4章 翻弄 - パーラー -
2010/05/01(Sat)
《今日の撮影、頑張ってね~! みちるの可愛い画像が届くのを心待ちにしてます》

 シアトルの恵理からメールが届いていた。

「ふぅ~、、、」

――恵理は期待してるけどできれば今日の撮影、断れないかなあ?! でもドタキャンすると迷惑だろうし、行くしかないかあ、、、

 憧れていたJULLYの撮影日なのに、昨日の事があって女装姿で外出する事が怖くて竜之介の気分は重く沈んでいる。

「くっそーっ! どう考えてもあったまきちゃう、、、」

 朝食を食べながら昨日の渋谷東署での出来事を思い出すと、改めて怒りと恥辱が込み上げてきた。
 
――あんな取り調べがあるもんか! あいつら絶対ボクを弄んでただけなんだ、、、 

 お尻の中にクスリを隠していないかと言いがかりをつけ、ボールペンでア×ルをかき回される行為に、図らずも感じてしまった自分が情けなくて、今でも信じられなかった。

「そうだ! 久しぶりにパチンコ、しちゃおっかなっ。 確かあの機種はもうホールに設置されてるはずだよね」

 そう思い立つと竜之介は少し胸のモヤモヤが晴れた気がして、通勤用のデイバックから小さなメモ帳を取り出した。

「あった! これだ」

 竜之介の勤めるゲーム開発会社・デジタルシステムワークスにはパチンコ・パチスロの開発チームがあり、最近同期のスタッフに新機種の攻略パターンを教えて貰ったばかりだった。

 週末は恵理と過ごす様になってからはとんとご無沙汰になっているが、以前は教えてもらった攻略法を駆使してスロットで随分と小遣いを稼いでいたものだ。

 次々と新機種と入れ替わってしまうので、ブランクの間にパターン情報を知っている機種がホールからなくなってしまうのも足が遠のいていた理由だ。

――JULLYとの約束は3時だから、、、 4時間は遊べる! あっ、、、 でも、、、 女装でパチンコ屋さんかあ、、、

 撮影現場には”みちる”として行くのだから、当然パチンコ屋へも女装姿で行くことになる。 竜之介は今まで女装をしてパチンコへ行ったことが無かった。

 食事をしたり、ショッピングしたり短い間の人々との接触はドキドキして楽しめるのだが、パチンコホールでは腕が擦れ合うほどの近距離で隣り合う人と何時間も過ごすことになるので、ばれるのが怖くてずっと避けていたのだ。

――今日で女装するのは最後だし、、、 え~いっ、行っちゃお~っと!

 ひとたび行く事に決めてしまうと心は踊り出し、竜之介はウキウキと身支度を始める。
 
――そだっ! どうせなら約束のフォトスタジオとも近いし、会社の帰りによく行ってたパーラー・ビッグウェーブに行ってみよっかなっ?! 

 たくさんの顔見知りに最初で最後の可愛いみちるを見せつけちゃおっかなあ?! 竜之介は自分の思い付きにトキメキを覚えた。

 パーラーで過ごす自分の姿を想像しながら念入りにメイクを始めた。
 
            ◆

     

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